CDPの質問票は、2024年より大幅なアップデートを迎えた。気候変動、森林、水セキュリティの回答インターフェースが統合され、直感的でユーザーフレンドリーなものとなった。さらに、企業の総合的な環境管理ツールになるよう、国際的な開示基準や他の開示フレームワークとの整合性を図った。本コラムでは、CDPの2024年版アップデートのうち、ISSBとの整合化、スケジュールの変更、質問表の統合について紹介する。
CDPのおさらい
CDPは2000年に設立されて以降、企業や政府に対する環境への影響について透明性を重視し報告するよう促している非政府組織(NGO)である。
日本では2005年より活動しており、主な目的は企業や自治体による気候変動、水資源の保護、森林保全への対策を推進することである。
回答者のユーザビリティを改善するために、昔からESG関連の他の情報開示との整合性を図っている:TCFD提言とは2018年より整合性を図っており、TNFDとも2023年に整合性を図り、相互運用性マッピング(interoperability mapping) を公表している。
CDPを通じた情報開示のメリット
CDPスコアは、投資家のみならず、企業の取引先も注目する。具体的には、サプライチェーンの選定条件として求められる場合もあり、ESG評価の一つの基準とされている。
さらに、CDPの使い勝手は投資家や企業からも好評だ。ERMによるESG評価機関のランキング(2023)では、評価機関の有用性と品質ランキングで、CDPがそれぞれ1位と2位となった。
なお、CDPを含むESGの5大評価機関の概要や比較はESGJournal独自調査に基づくお役立ち資料(ホワイトペーパー)でまとめている。
CDP開示を行う企業数は増加傾向にあり、2020年に9,526社の企業しかCDPに回答していなかったが、2023年にはその2倍以上の約23,000社に昇った。日本企業も同じ傾向を示し、2023年に約2,000社がCDP回答を行った。
これらのことから、CDPを通じた情報開示は企業のESG評価の一つの基準になり、特に「E」(環境)関連のメインのフレームワークのひとつとして認められ続けるだろう。
2024年のCDPの主要な変更点
ポイント①:ISSBのIFRS基準・ S2号との整合性
CDPは、 2024年の主要な変更を解説するガイダンス「Corporate Disclosure Key Changes for 2024: Part 1」で、一番最初の変更点としてフレームワークや基準との整合性を挙げている。特に、国際会計基準(IFRS)財団の「IFRSサステナビリティ開示基準」のS2号(気候変動関連の開示基準)とのアラインメントが示されている。さらに、このIFRS S2号との具体的な相互運用性(interoperability)を示すマッピング「Mapping IFRS S2 to CDP’s 2024」も今年、発表している。ただ、データポイントの細かいズレもあると考えられ、完全一致しない可能性もあるため、ISSB基準に対応していればCDPのスコアアップにつながるという単純な話ではない点にご留意いただきたい。
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執筆者紹介
マルティネス リリアナ (ESG Journal 専属ライター) サステナビリティ学修士。シンクタンクにて海洋・大気環境に関する政策の策定支援を行う。国際海事機関(IMO)ではTechnical Advisorとして国際議論への参加経験を積み、その後、気候変動課題を中心に企業向けにコンサルティングを行う。非財務情報開示フレームワークからサステナビリティの国際動向まで幅広くコラムやホワイトペーパーで解説。 |