KPMGは2024年版「サステナビリティ・レポーティングに関する調査」を発表し、世界中の企業が持続可能性報告の義務化に備えている現状を明らかにした。本調査は、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)のような新たな規制への対応を進める企業の取り組みを詳細に分析している。
企業の動向:持続可能性報告が業務の一環に
KPMGの調査によれば、世界の大手企業250社のほぼすべて、各国・地域の主要100社の多くがサステナビリティ報告を通常業務の一部として取り入れている。炭素削減目標を公表する企業はここ数年で大幅に増加。生物多様性に関する報告も依然低水準ながら増加傾向にある。
特に注目されるのが、CSRDに基づく「ダブル・マテリアリティ」の採用である。この概念を採用する大企業は現在50%に達しており、規制義務化を見越した対応が進んでいる。一方で、規制外の自主的なガイドラインや基準も依然として広く利用されている。
主な傾向
調査では以下の6つの重要なトレンドが明らかになった。
- 持続可能性報告と炭素目標設定の普及:企業活動の中核として定着。
- 義務化の先取り:EU CSRDを見据えた準備を進める企業が増加。
- ダブル・マテリアリティの拡大:大企業の半数がすでに採用。
- 自主的な基準の利用継続:規制対応と自主性の両立。
- 生物多様性報告の増加:徐々に広がりを見せる。
- TCFDおよびIFRS S2の採用増加:気候関連財務情報開示への関心が高まる。
最も包括的な調査
今回の調査は、KPMGの58のメンバーファームが、各国・地域の主要企業100社による年次報告書、ESG報告書などを分析。計5,800社のデータを収集しており、1993年以来のシリーズで最も包括的な内容となっている。
KPMGの専門家によると、「報告義務化への動きは、企業が持続可能性への取り組みを強化する契機となっている」とのこと。規制への準拠が求められる中で、企業の持続可能性報告は、社会的責任を果たすだけでなく、長期的な成長戦略の重要な一環となることが期待されている。
【参照ページ】
(原文)The move to mandatory reporting: Survey of Sustainability Reporting 2024
(日本語参考訳)報告義務化への動き サステナビリティ・レポーティング2024に関する調査