SSBJ基準が求める「サステナビリティ情報の質」─開示実務で押さえるべきポイント

サステナビリティ開示の情報品質とはーSSBJ基準に示されたポイント解説

※本記事は、2025年6月に発行した記事にSSBJハンドブックからの内容を一部追記し再掲載している。(2025年7月)

2025年3月にSSBJ(サステナビリティ基準委員会)よりサステナビリティ開示基準が公表され、27年3月期から一部のプライム上場企業が報告対象となる。任意開示であったサステナビリティ情報が徐々に「制度開示」として標準化していく中、今後は情報の「質」が投資家やステークホルダーの意思決定に直結していくだろう。

関連オリジナル解説>>>SSBJ基準とは? 国内外基準・制度との違いと企業の実務対応を解説


開示情報の品質を担保するための中核的な考え方として、SSBJの基準「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」の中で、「質的特性」が明示されている。
本稿では、この特性の7項目についてオリジナル事例とともに紹介する。開示実務のあらゆる判断材料実践的なフレームワークとして活用してもらいたい。現状の、サステナビリティ開示情報がSSBJが求める要件を満たしているかの参考になるだろう。

サステナビリティ情報の質的特性とは

質的特性とは、サステナビリティ関連財務情報が利用者にとって「有用な情報」として機能するために備えるべき性質を体系的に整理したものである。この枠組みは、国際的な開示基準であるIFRS S1号の付録Dに示された原則に基づいており、SSBJが策定した基準においても、その構造を踏襲している。

質的特性は、大きく2分され、ひとつ目が「何を開示するか」という内容面を示したもの。ふたつ目が、「どのように開示するか」という形式面・運用面の視点を示すものである。

ひとつ目の「基本的な質的特性」は、開示情報の有用性の中核を担う〈関連性〉と〈忠実な表現〉と〈重要性〉が含まれる。つまり、質の高い状態とは、サスティナビリティ情報の関連性、重要性が忠実な表現により開示されている状態であると言える。

ふたつ目の「補強的な質的特性」は、〈比較可能性〉〈検証可能性〉〈適時性〉〈理解可能性〉といった、基本的特性を補強・補完する観点が含まれる。これらは、情報を他の情報と比較しやすく、信頼され、利用しやすい情報にするための考え方であり、実務的な判断や記述方針において参考になるだろう。

SSBJ基準においては、情報の有用性が「質的特性の充足度」によって判断される場合があるとしている。以下、質的特性についてどのような情報なら質が担保されていると言えるのか、事例を交えながらまとめている。現状の開示情報が質的特性に合致できているか見直してみるとよいだろう。


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執筆者紹介

竹内 愛子 (ESG Journal 専属ライター)
大手会計事務所にてサステナビリティ推進や統合報告書作成にかかわるアドバイザリー業務に従事を経て、WEBディレクションや企画・サステナビリティ関連記事の執筆に転身。アジアの国際関係学に関する修士号を取得、タイタマサート大学留学。専門はアジア地域での持続可能な発展に関する開発経済学。

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