ESRS開示項目66%削減案へEFRAGが草案公表。ダブルマテリアリティ評価も負担軽減

7月、欧州のサステナビリティ報告基準を策定する欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を大幅に簡素化する修正案の作業文書を公表した。企業の報告負担を軽減するため、開示データ項目を全体で約66%削減することを提案している。特に、必須のデータ項目は現行比で50%以上の削減を目指す。

今回の修正案は、欧州委員会(EC)からの要請に応じたもので、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の政策目的を損なうことなく、企業の過度な管理負担を軽減することが狙い。EFRAGは7月末から約60日間の意見公募(パブリックコメント)を実施し、11月末までにECへ最終的な技術的助言を行う計画だ。

修正案の主な柱は以下の通り。

  • データ項目の大幅削減: 企業の報告負荷が特に大きいと指摘されていた、詳細なデータ項目を抜本的に見直し。必須(shall)項目を50%以上削減するほか、任意(may)項目は例外を除きほぼ全て廃止する。これにより、全体で約66%の項目削減を見込む。
  • ダブルマテリアリティ評価の簡素化: 企業の事業活動が環境・社会に与える影響と、気候変動などが企業財務に与える影響の双方から重要性を評価する「ダブルマテリアリティ評価」について、プロセスが過重との声に応え、より実用的で効率的なアプローチを推奨。企業の戦略に基づいたトップダウンでの評価を促す。
  • 報告書の柔軟性と可読性の向上: 報告書の冒頭に「エグゼクティブサマリー」を設けたり、詳細な指標を付録に記載したりするなど、柔軟な構成を許容。情報の重複を避け、企業の状況に即した分かりやすい報告を可能にする。
  • グローバル基準との整合性強化: 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表した基準との相互運用性を高めるため、温室効果ガス(GHG)排出量の算定範囲を連結財務諸表の範囲に合わせるなど、定義や文言の統一を進める。

EFRAGは、今回公表した文書はあくまで議論のたたき台であり、今後内部での議論や意見公募の結果を踏まえて最終案を策定するとしている。

(原文)Draft Amended ESRS Exposure Draft UNAPPROVED Working documents

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