欧州委員会、サステナビリティ報告関連法規(第三国ESRS)の制定を延期へ

10月6日、欧州委員会は金融サービス分野における115の「重要ではない2次法(regulatory and implementing standards (Level 2))」の優先度を下げ、その採択を少なくとも2027年10月1日まで延期することを発表した。”重要ではない2次法”には、EU域外ESRSに関する内容が含まれており注目されている。

※2次法について:CSRD(企業サステナビリティ報告指令)は、企業にサステナビリティ情報の開示を義務付ける基本的な法律(1次法)であり 、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)は、そのCSRDに基づき、具体的に何を報告すべきかを定める詳細な基準(2次法)

今回の「重要ではない」と判断された115件の2次法は、EUの政策目標達成や1次法の効果的な機能に不可欠ではないと見なされている。欧州委員会は、この優先度を下げることで、規制を簡素化し、企業や関係当局の負担を軽減する狙いがある。

CSRDおよびESRSへの影響

採択が延期される主なESRS関連法規の中には「特定の第三国企業向けESRS(当初は2026年第2四半期に採択の予定)」が含まれている。
※その他は、「NON-ESSENTIAL EMPOWERMENTS IN DG FISMA ACQUIS」というリストに記載があるので参考にされたい。

当初の予定日が無効となり2027年10月1日以降に延期されることが予定されている。

なお、本リストには、セクター別ESRSに関する記述もあるが、2月のオムニバス草案公表の際「強制的なESRSセクター別基準の採用計画を公式に中止」している。また、ESRS改訂に関する記述もあり、対応すべき優先度が高くないことがうかがえる(改訂は期日が27年10月以降)。

出典:欧州委員会サイトNON-ESSENTIAL EMPOWERMENTS IN DG FISMA ACQUIS

日本企業への影響

今回の延期発表は、EUで事業を展開する海外企業にとって、CSRD対応のスケジュールにさらに猶予が与えられるだろう。第三国企業向けの基準はどうなるか、また公布された場合どのように対応すべきか、体制を含めて準備を一時的に見直すことが可能となる。

ただし、この延期はあくまで「採択」の延期であり、CSRDの基本的な要求事項や報告義務そのものがなくなるわけではないという点には留意が必要になる。開示の対象となる企業は引き続きその要件に基づいた対応を進める必要がある。

今後も、EU法改正の動向、1次法の見直しプロセスにおいて、2次法がどのように扱われるか(修正、廃止などの可能性もある)を注視することが重要になるだろう。

(参考サイト)De-prioritisation of Level 2 acts in financial services legislation

>>>関連するオリジナル解説:【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

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