
9月21日から28日まで国連総会と並行して開催されたクライメイトウィークNYC 2025は過去最大規模となり、世界の金融・産業界のリーダーが集結した。議論は政策から市場へと重心を移し、気候対応が投資家にとって現実的な経済課題であることを浮き彫りにした。見えてきたのは次の5つの論点である。
■ 市場が主導する移行
政府主導の政策から資本市場主導へ移行が進む。MSCIのヘンリー・フェルナンデス会長は「再生可能エネルギーへの転換は投資先の勝敗を決しつつある」と強調。米大手年金基金も「気候対応は長期的収益の源泉」との認識を示した。
■ 現実化する物理的リスク
洪水や熱波による損失は、世界の上場企業に年間1.3兆ドルの打撃を与える恐れがある。数年前まで「2050年以降の問題」とみられた物理的リスクは、すでに収益を直接揺るがしている。
■ 投資分析のハイパーローカル化
異常気象の地域性を踏まえ、資産やサプライチェーンを細かい地理単位で評価する動きが加速。米各地で保険会社の撤退が進むなか、地域リスクが金融市場全体に波及する懸念が広がる。
■ 資金流は再エネと電化へ
昨年導入された新規発電の九割を再生可能エネルギーが占めた。投資マネーは送電網整備や省エネ技術に殺到し、「化石燃料は過去の技術」との声も強まる。もっとも、業種や国によって移行スピードには差がある。
■ 国際炭素市場の基盤整備
カーボンクレジット取引は制度設計が本格化。2040年には需要の半分が規制に裏付けられると試算される。信頼性ある市場を実現できるかは各国の協調と透明性がカギとなる。
ニューヨークでの議論は、市場が移行を牽引しつつ、気候リスクがすでに投資行動を左右する段階にあることを示した。もはや気候変動は「将来の問題」ではなく、「現在の投資判断そのもの」になっている。
(原文)Five Takeaways for Investors from Climate Week NYC 2025
(日本語参考訳)2025年ニューヨーク気候週間から投資家が学ぶべき5つのこと