2023年12月、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)は、UNEP FIが20の金融機関と共同で開始したグローバル・パイロット・プロジェクトに関する報告書を発表した。本パイロット試験は、TNFDのフレームワークに基づいて、自然関連リスクの報告を開始するための現在のニーズと課題を評価することを目的として開始された。
同プロジェクトに参加した20の金融機関は、ABNアムロ、アクサ・クライメート、アイルランド銀行、コメルツ銀行、CTBC、ダンスケ銀行、ドイツ連邦銀行、グループBPCE、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)、Nuveen、ピレウス銀行、ロベコ、ソシエテジェネラル、サンコープ、ウエストパック銀行、農林中央金庫、三井住友銀行、SOMPOホールディングス。
金融機関がTNFDフレームワークを実施する上での主な課題として挙げられたのは以下の通り。
- 特定のアセット分野に関するデータの不足
- ポートフォリオ全体での評価とシナリオ分析を通じてm自然資本に関する影響を定量化するより具体的な方法の検討
- シナリオ分析やギャップ特定のための社内データの不足
- サプライチェーン全体での自然関連リスク等、データ精度の低さ
- 顧客や投資先での生物多様性の損失に関する財務的な影響評価手法の改善
- 社内のキャパシティ・ビルディングと社内とのパートナーシップの検討
課題を踏まえた上で、TNFDフレームワークを導入するための5つの提言もまとめている。
- キャパシティ・ビルディング。上級管理職を含む経営陣に対して、組織内の自然資本リスクを共有しオーナーシップを獲得した上で、専門家の雇用、研修プログラムの開発、データ分析に関するツールや技術への投資を行い、自然資本リスクを評価するケーパビリティ獲得の必要性を要請
- データとメトリクスの整備。LEAPアプローチに則り、取得可能なデータと存在しないデータを把握し、存在しないデータに対してどのように情報開示できるかを明確にすることで、今後の自然資本リスク評価を強化するための基盤を構築。また、顧客や投資先に対して、自然資本に関するデータの収集や情報開示の報告に対してガイダンスやベストプラクティスの提供も提案
- 気候と自然の課題のネクサス(連関性)の理解。これまでの気候変動リスク評価に加えて、自然分野のリスク評価を行うだけではなく、自然分野リスクが気候変動リスクに与える影響等の課題同士の連関性を意識した統合的なアプローチを要求
- ビジネス上の自然リスクの重要性の理解。銀行、保険会社、投資家にとって自然資本リスクの捉え方は異なるため、異なる関係者毎にあわせたガイダンス等を作成
- 自然分野の機会の特定。自然に関するリスクの定量化が包括的な理解に役立つ一方で、潜在的な機会の特定を要求
【参照ページ】
(原文)Insights into UNEP FI’s TNFD pilots
(日本語参考訳)UNEP FI、TNFDパイロットで報告書発行