4月11日、国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主は、金融、商社、電力の3業界の6企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱商事、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する東京電力ホールディングスと中部電力)に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出したことを発表した。
昨年の株主総会シーズンでは、日本企業も過去最多の気候変動に関する株主提案に直面した。こうした株主提案は我々環境NGOに限らず、国外の機関投資家や地方自治体からも提案されている。多様なステークホルダーが高炭素排出企業による気候変動対策の遅れに対して危機意識を共有し、行動に移している。
今年6企業に対して提出された株主提案はパリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画、あるいは、2050年炭素排出実質ゼロ(ネット・ゼロ)への移行に向けた取り組みに関する情報開示を企業に求めるものである。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月に公表した第6次統合報告書によれば、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2035年までに19年比で60%減らす必要がある。しかし気候変動対策の強化がなければ、2100年までに約3.2℃の上昇が見込まれており、現状の各国の削減努力は極めて不十分である。本報告書の公表に合わせ、国連のグテーレス事務総長は「気候時限爆弾が刻々と時を刻んでいる」と危機感を示し、先進国は2035年までに電力部門における温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを求めている。
日本が議長国を務めるG7広島サミットを前に、日本が化石燃料(LNG等)投資の必要性を認めるよう求めたり、発電部門で化石燃料の利用継続を前提とした技術導入を推進していることについて、G7加盟国の反発を招いたとの報道もある。米国や英国を含む加盟国の政府関係者は、札幌で開催される気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケ草案に疑問を呈し、気候変動対策を加速させる取り組みにあまり重点が置かれていないと指摘している。
民間企業の気候変動対策は日本政府のこうした方針に大きく影響を受けるとはいえ、国際社会において事業を展開し、信頼を得るためには業界あるいは企業独自の気候変動対策が求められている。とりわけ、今回株主提案の対象となった企業(メガバンク3社や三菱商事)や対象企業ら(東京電力HDと中部電力傘下のJERAを含む)は国内外で化石燃料事業への投融資および関与を継続している。特に、LNG火力のパイプライン開発や発電所の新設、既存の石炭火力発電所の稼働を延命させるアンモニア・水素の混焼技術の推進は大きな問題である。
【参照ページ】
国内外の環境NGOが東証プライム6企業に株主提案 〜メガバンク全3社含む日本企業の気候変動対策に問題提起〜