BCG / INSEADサーベイ:「The BCG-INSEAD Board ESG Pulse Check」取締役会とESGの関係性・現状について
3月30日、Boston Consulting Group (BCG)とINSEADは、企業の取締役会がESGの監督に果たす役割について調査した報告書「The BCG-INSEAD Board ESG Pulse Check」を発表した。本報告書では、発展途上であるESG分野に対し、取締役はサステナビリティのトピックに優先順位をつけ、焦点を当てる必要性を認識している一方で、ほとんどの取締役がESGを戦略に統合することに大きな効果がないと報告しており、多くはESG監督のためのツールを欠いていることも明らかになった。
本報告書は、BCGとINSEADが複数年にわたり、ESGの監督において取締役会が果たす役割をパルスチェックとインタビューを通じて調査・作成した。調査には、平均7年の取締役経験を持ち、平均2つの取締役会に所属する120人以上の回答者からの回答が含まれている。回答者は、ヨーロッパ、アジア太平洋、アメリカなど複数の地域にまたがり、企業規模も幅広く、半数以上が売上高10億ドル(約1,225億円)未満、11%が100億ドル(約1兆2,259億円)以上となっている。
BCGとINSEADによると、本調査では、ESGの問題が取締役会の議題としてより重要視されていることが明らかになった。また、ステークホルダーも取締役会レベルにおけるESG意識の向上を促しており、約4分の3の取締役がESGに関する株主とのエンゲージメントが強まったと報告し、約3分の2が次の年次総会で機関投資家がESG関連の提案を行うことを期待しており、さらに半分以上がESGに関する懸念として規制当局、顧客、従業員を挙げている。
ESGへの関心が高まっているにもかかわらず、多くの回答者は、取締役会が効果的なESGの監督に必要な手段を欠いていることが多いと指摘し、約70%の取締役がESGを会社の戦略やガバナンスに統合することが中程度または全く効果的ではないと報告している。同様に、90%以上の取締役が、企業戦略をESGと整合させるための適切な取締役会アプローチとして「戦略的考察」を挙げているが、その役割を効果的に果たしていると回答したのは半数以下であった。
ESGの効果的な取締役会監督を阻む主な障害を特定するよう求められた取締役会の回答のトップは、「知識、データ、能力の不足」で、44%の回答者が挙げている。その他の上位回答は、複雑さと曖昧さの管理(43%)、取締役会のコミットメントの欠如(30%)、アイデアを行動に移せない(26%)であった。企業の ESG 目標達成に対する主な脅威としては「組織の実行力」が 43%でトップ、次いで「コストの上昇」「組織文化」「経営陣のコミットメント」となり、それぞれ 30%以上の回答者が挙げた。
また、本調査では、ESGの懸念事項のトップとして複数のセクターの取締役会が挙げた気候関連問題の管理・監督についても深く考察している。回答者の42%は、自社がネット・ゼロを公約していると答えているが、その目標を達成するための計画を公表しているのは半数強にすぎず、財務諸表に気候変動の影響を含めているのはさらに少数であることを明らかにしている。
【参照ページ】
(原文)Directors Can Up Their Game on Environmental, Social, and Governance Issues
(日本語訳)BCGとINSEAD、取締役会調査の結果を発表