上場企業の40%以上がスコープ3排出量の報告を開始

上場企業の40%以上がスコープ3排出量の報告を開始

4月に発表した、投資データ・リサーチプロバイダーであるMSCIの新しいレポートによると、世界の上場企業の温室効果ガス排出量に関する情報開示は増加しており、現在では約60%がスコープ1と2の直接排出量を報告し、40%以上が少なくともスコープ3(バリューチェーン)の排出量を報告している。

また、MSCIの報告書によると、より多くの企業が排出削減目標を設定しており、目標設定のペースは鈍化しているものの、その質は向上しており、科学的裏付けのある脱炭素化目標が急増している。

「MSCIネット・ゼロ・トラッカー」の最新版である本レポートで、MSCIは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インベスタブル・マーケット・インデックス(ACWI IMI)内の企業の気候変動の進捗状況を評価し、「インプライド・温度上昇」指標のデータを盛り込んだ。2021年に開始された「推定気温上昇」ツールは、各企業の排出削減目標を考慮し、企業の現在および予測される温室効果ガス排出量を推定される地球の気温上昇に換算する。

報告書によると、世界の上場企業による排出量報告は引き続き改善されており、スコープ1および2の排出量を報告している企業は60%近くに達し、過去2年間で16ポイント増加した。MSCIによると、バリューチェーン排出量の報告は、さらに速いペースで増加しており、現在42%の企業が、少なくともその一部について報告している。

同報告書では、米国企業と世界の同業他社との間で、情報開示に大きな隔たりがあることも指摘されている。スコープ1と2の排出量について報告している米国公開企業は45%に過ぎず、米国以外の先進国市場では73%、スコープ3について報告している米国公開企業は29%に過ぎず、先進国市場では54%であった。

この排出量報告の進展は、気候変動関連の開示を義務付ける規制要件が多くの国・地域で増加し続けていることを背景としており、EUでは新たな開示要件が施行され、IFRSの国際持続可能性基準審議会(ISSB)が最近発表した基準に基づく持続可能性報告制度に向けてスコープ1、2、3の報告を義務付ける国が 増加している。MSCIの報告書は、米国SECの新しい気候変動報告ルールが報告ギャップの解消に役立つ可能性があると指摘しているが、最終決定されたSECのルールでは、スコープ1と2の業務上排出量の報告は大企業にのみ義務付けられており、それも重要であると判断された場合に限られ、スコープ 3の報告は義務付けられていない。SECはまた、一連の法的挑戦のため、規則の実施を一時停止したと発表した。

報告書によると、目標設定のペースは落ちているものの、企業は引き続き気候変動目標を設定している。MSCIによると、2024年1月末現在、52%の企業が排出量削減目標を開示しており、38%の企業が目標を公表している。

【参照ページ】
(原文)The MSCI Net-Zero Tracker

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