3月15日、CDPが公表したレポートによると、企業はサプライチェーンにおける排出量の追跡に遅れをとっており、サプライチェーンにおける自然に関する規制の完全義務化を逃す危険性があることがわかった。この10年間に広範な規則が施行される可能性があるため、企業は間に合わせるために、自然や気候について今すぐサプライヤーに関与するよう求められている。
本レポートによると、サプライチェーン全体で自然を追跡すると、環境影響に関する情報開示のリーダーシップは、必要な規模と範囲では実現されておらず、サプライチェーンの排出量について報告している企業はわずか41%にとどまっている。
COP15では、2030年までに大企業や金融機関が生物多様性に関するリスク、影響、依存関係を評価し、開示することを奨励し、可能にするという画期的な合意がなされたにもかかわらず、70%近い企業が、2022年に自社のバリューチェーンが生物多様性に与える影響を評価していないとCDPに報告している。
ほとんどの企業は、サプライチェーンにおける気候変動と自然への影響に共に取り組まなければならないことをまだ認めておらず、本レポートによると、ほとんどの企業が気候に関する情報開示を優先していることがわかる。2022年にCDPに開示した18500社以上の企業全体では、7000社以上が気候変動に関してサプライヤーとエンゲージしたと報告したのに対し、水に関しては915社、森林に関しては500社強にとどまった。しかし、森林破壊について開示している企業では、サプライチェーンを巻き込む割合が非常に高く、69%がこの問題についてサプライヤーと関わっているのに対し、気候変動について開示している企業のうち、気候についてサプライヤーと関わっているのは39%、水については23%となっている。
少数ではあるが、自然を通常業務に組み込むことで率先して行動している企業も増えている。CDPは、サプライチェーンプログラムを通じて、6.4兆ドルの調達支出に相当する280以上のサステナビリティリーダーと協力している。CDPは、サプライチェーン・プログラムを通じて、6兆4,000億ドルの調達額に相当する280人以上のサステナビリティ・リーダーと協力している。例えば、CDPに初めて回答した企業の26%が気候変動に関する目標を設定したと報告しているが、繰り返し回答した企業の57%は設定しており、毎年の情報開示が目標設定を促進することを強調している。
10社に1社はサプライヤーとの契約に気候変動関連の要件を盛り込んでおり、これは森林破壊に関してもある程度実現している。しかし、これらの要求事項のほとんどは、1.5℃の気候科学とまだ一致しておらず、サプライヤーに科学的根拠に基づく目標の設定を要求している企業は全体の1%以下(0.04%)である。
CDPのデータによると、上級管理職は、サプライチェーンにおける水の安全保障や森林破壊といった重要な問題に取り組むために必要なレベルに近いインセンティブを与えられていないことがわかる。企業の70%のトップマネジメントは、2025年までに森林破壊に取り組むインセンティブを得られないと予想され、一方、水関連のインセンティブを最高調達責任者に付与している企業はわずか3%に過ぎない。気候に関しては、74%の企業が気候変動に関する取締役会レベルの監視を報告し、残りの企業の41%が今後2年間に導入する予定であるなど、よりポジティブな状況となっている。このことは、バイヤーにも伝わり始めているが、報告書によると、まだ非常に初期の段階であることがわかる。
【参照ページ】
(原文)Companies failing to engage suppliers on nature and climate despite incoming regulation
(日本語参考訳)CDP、企業によるサプライチェーンの取り組みの遅れを報告