英国でエネルギー法2023成立、洋上風力や送配網整備加速

10月26日、英国は、エネルギー安全保障とエネルギー価格の上昇という課題に対処することを目的とした「エネルギー法2023」を正式に可決した。クリーンエネルギーの推進と送配電網の強化に焦点を当てたこの新法は、政府の基本的な方向性を示している。

エネルギー法2023は、英国における洋上風力発電プロジェクト開発の同意プロセスを簡素化し、洋上風力発電プロジェクトの開発を加速させることに主眼を置いている。さらに、送配電インフラのアップグレードでは、陸上電力網の競争を促すために競争入札制度が導入される。独立系統運用者兼計画機関(FSO)の設立は、英国のエネルギーシステムの開発を調整・計画し、電力システムの運用を監督し、ガス、電力、水素などを管理する。

さらに、ガス・電力市場庁(Ofgem)の権限が強化され、日常的な意思決定においてカーボンニュートラル目標への配慮がなされるとともに、地域暖房ネットワークへの管轄拡大が行われる。過剰な価格設定を抑制するためのルールが設けられ、全国約50万人の地域暖房ネットワーク消費者へのサービス向上を目指す。OfgemはFSOの機能もサポートする。同法は、大規模集落における水素暖房の実証実験を開始する。

エネルギー法2023には、炭素回収・貯留(CCS)と低炭素水素への民間投資を奨励する条項が含まれている。核融合原子力を規制する世界初の法律となる。英国は、2040年までに核融合発電所のプロトタイプを建設するという目標を前進させることを目指している。

英国政府は、新法を通じてエネルギー・インフラへの民間投資1000億ポンド(約18兆円)の誘致を見込んでいる。これらの施策を実施することで、エネルギーコストの削減が期待されており、送配電網の競争入札導入により、2050年までに10億ポンド(約1,848億円)の削減が見込まれている。エネルギー・ネットワーク合併制度は、競争市場庁の下に設置され、エネルギー・インフラ企業間の合併を促進し、今後10年間で最大42億ポンド(約7,761億円)の削減を見込んでいる。

さらに、スマート電力システムの導入による2050年までに100億ポンド(約1兆円)、ヒートポンプ投資へのインセンティブによる56億ポンド(約1兆円)、スマートメーターの普及などによる節約も試算されている。これらの措置の実施に関する具体的な詳細は、今後、二次法の中で説明される予定である。

【参照ページ】
(原文)New laws passed to bolster energy security and deliver net zero
(日本語参考訳)エネルギー安全保障を強化し、ネット・ゼロを実現する新法が成立

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