ロカ・グループ、シュナイダーエレクトリックと連携しデジタル変革を本格展開―生産効率と環境対応を強化へ

10月23日、浴室機器大手のロカ・グループは、エネルギー技術大手シュナイダーエレクトリックと進めてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)計画の試験導入が成功したことを受け、今後80ヵ所を超える世界の生産拠点に展開する方針を明らかにした。両社はエネルギー効率の改善、操業の最適化、持続可能性の推進を目的に、統一されたデジタルモデルを構築し、グローバル規模での生産体制の強化を図る。

ロカ・グループは多様な生産環境を抱える中で、各工場の特性に応じつつ共通の基盤で管理できる仕組みの必要性を認識していた。シュナイダーエレクトリックのアドバイザリーサービスチームが、診断、戦略策定、グローバルモデル設計、実装、スケーリングという体系的な手法を導入。デジタル化を企業の経営戦略と整合させることで、効率性と拡張性を両立させた。この枠組みの中では、リアルタイムで生産や品質を監視する「AVEVA MES」と「AVEVA System Platform」、エネルギー利用状況を管理する「Power Monitoring Expert」や「AVEVA PI System」などが活用されている。国際標準化機構(ISO)のエネルギー管理基準であるISO 50001に準拠した形で、より精度の高い消費管理も行われる。

ポルトガル・カンタニェーデ工場で実施された実証では、生産設備総合効率(OEE)が2.1%向上し、生産1トン当たりのエネルギー消費は1.86%減少した。生産プロセスの自動化や作業チームの自立化により、年間で4,400時間を超える作業時間を削減する成果を上げた。

シュナイダーエレクトリック産業オートメーション部門のサービス担当上級副社長フリードリヒ・リヒターは、「ロカ・グループとの協業は、デジタル化とサステナビリティが融合し、実際の産業現場で計測可能かつ拡張可能な成果をもたらす好例だ」と述べた。一方、ロカ・グループでITおよびデジタルトランスフォーメーションを統括するジャック・ニューワンドは「このプロジェクトは業績指標の改善に加え、よりスマートで責任ある産業への転換を後押しする」と語り、製造部門のミゲル・バラオナも「現場作業員から経営陣までが共通のデータを基に意思決定できるようになった」と変革効果を強調した。

両社の取り組みは、環境目標の実現とも密接に結び付いている。ロカ・グループはシュナイダーエレクトリックのフランス・ルヴォドロワル工場を視察し、ポルトガルとドイツでデジタル成熟度を測定したうえで、二つの工場をモデルケースに選定した。カンタニェーデ工場では運用とエネルギー管理が両面で刷新され、これを基に他拠点への水平展開を進める。

同社は環境経営の実績でも高い評価を受けており、2024年には企業の持続可能性を評価する国際認証エコバディス(EcoVadis)から最高位のプラチナメダルを取得、世界上位1%の企業に選出された。サステナビリティ担当ディレクターのカルロス・ベラスケス氏は「傾聴、学習、行動の継続が成果を支えている」とし、これまでに150件を超える脱炭素プロジェクトを展開。オーストリア・グムンデンには世界初の排出ゼロ衛生陶器工場も設立している。

同社の気候変動対策は科学的根拠に基づく目標設定(SBTi)の承認も受けており、2018年以降、スコープ1・2排出量を53%削減。年間2,100万キロワット時を超える再生可能エネルギーを利用し、2025年から少なくとも10年間、欧州の全事業拠点を100%再エネ電力で稼働させる計画だ。

ロカ・グループとシュナイダーエレクトリックは今後、ポルトガル・アナディア、ポーランド、モロッコ、ブラジル、オーストリア、スイスなどの工場へと順次展開し、最終的に80以上の生産拠点に統一モデルを導入する方針を示している。両社はデジタル化とサステナビリティを両立させた新たな産業モデルの構築を通じ、効率的で強靭な生産ネットワークの実現を目指す構えだ。

(原文)ROCA Group to Roll Out Digital Transformation Roadmap Following Successful Launch with Schneider Electric
(日本語参考訳)ROCAグループ、シュナイダーエレクトリックとの提携に続きデジタル変革ロードマップを発表

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