イベントレポート サステナビリティ経営フォーラム2025

『本質に迫る対話とデータ活用 ~信頼を築く情報開示と戦略の再構築~』

ESG Journalを運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社は、2025年10月9日(木)に丸の内・ステーションコンファレンス東京にて、「サステナビリティ経営フォーラム2025 本質に迫る対話とデータ活用」を開催しました。

本フォーラムには、プライム上場企業を中心とするサステナビリティ経営の管理職・実務リーダー100名超に加え、情報開示の専門家や学術界の権威が一堂に会し、実務家から有識者まで、多角的な視点を持つ幅広い層による会となりました。
また、議論では「サステナビリティ情報の本質的な役割と価値」「保証に耐えうる開示プロセス」「サステナビリティ戦略におけるAI活用」といった、企業が直面する最新の重要論点が集中的に討議されました。

当日は、登壇者によるキーノートパネルやパネルディスカッションに加え、参加型のワークショップとラウンドテーブルが実施されました。これらのインタラクティブなセッションを通じて、サステナビリティ戦略の実効性を高める具体的な示唆が共有されました。

キーノート・パネルディスカッション:信頼を築く情報開示の新潮流

キーノートでは、水口 剛 氏、塩村 賢史 氏、シェルパ・アンド・カンパニーのCSuO中久保 菜穂が登壇し、今後の市場におけるESGへの取り組みや情報開示の重要性の再認識と、社会システム全体の価値共創に関する方向性が示されました。

※登壇者のプロフィールは当日のプログラム概要参照

特に、ESG評価においては「個別企業の評価」から「市場全体の健全性を高める枠組み」へと再定義されていることに関して議論が展開されました。また、GPIFによるエンゲージメントの実践や、パーパス・戦略・データを整合的に結ぶ“語れる開示”の重要性も強調されました。

2つのパネルディスカッションでは、それぞれサステナビリティ情報の信頼性と、AIによるデータ分析の最前線という両面から議論が行われました

1つ目「サステナビリティ情報の信頼性と課題」では、大野 美希子 氏、鳥居 夏帆 氏、三井 千絵 氏が登壇し、サステナビリティ情報の信頼性を高めるためには、リスクと機会の特定および保証や社内対話の重要性が示されました。また、開示の「正確性」「透明性」を高める取り組みが不可欠であることが指摘されました。

※登壇者のプロフィールは当日のプログラム概要参照

2つ目「AIによる情報分析の最前線と課題」では、酒井 由紀子 氏、増田 典生 氏、中尾 悠利子 氏が登壇し、ESGデータの構造化やAIによる開示文書の整合性チェック、業績との連動性についての可視化など、最新の取り組みが紹介されました。

※登壇者のプロフィールは当日のプログラム概要参照

グループディスカッションとCSuOラウンドテーブル

グループディスカッションでは、南原 亨成 氏を迎えシェルパ・アンド・カンパニーCEOの杉本 淳によるモデレートで「第三者保証に耐えうるサステナビリティ情報の収集・開示プロセスの構築」をテーマに、参加者がチームに分かれてサステナビリティ情報管理システムの構築ポイントについて議論を行いました。

※登壇者のプロフィールは当日のプログラム概要参照

サステナビリティ情報の収集は、単なる開示対応ではなく「意思決定インフラ」としての役割を持つことが説明され、正確性・網羅性・一貫性を備えた情報が戦略的判断の質を左右する点が強調されました。特に、情報の品質を高めるためには内部統制の強化とリスク防止が重要であることが指摘され、保証対応を超えた経営基盤として、収集・確認・報告まで一貫した体制を構築する必要性が改めて確認されました。

ラウンドテーブルでは、土屋 大輔 氏と中久保 菜穂による進行で「サステナビリティデータの経営への活用とテクノロジーの可能性」をテーマに、業界ごとの実務者がサステナビリティ経営における課題や現状について活発に議論を交わしました。

※登壇者のプロフィールは当日のプログラム概要参照

サステナビリティ情報の開示は、財務情報と同等の精度・信頼性が求められるとされ、第三者保証や統一基準の整備が急務であることが指摘されました。また、財務・非財務情報を統合した開示基盤の構築や、KPIと経営戦略の連動など、実行から評価までを一貫して設計する必要性が強調されました。さらに、投資家との対話においては、ナラティブ(ストーリー)と定量成果の関連性を明確にし、経営との整合性を示すことが求められました。

参加者の声

本フォーラムでは、参加者の約9割が各セクションの内容に「満足」と回答しており、全体として非常に満足度の高いイベントとなりました。多くの参加者から「自社の実務に役立つ知見を得られた」として、主に以下のような声が寄せられました。

  • 「情報開示・エンゲージメント・企業価値の関係について理解が深まった」
  • 「保証に関するツールの活用方法をより具体的に学ぶことができた」
  • 「データサイエンスの最前線を知る貴重な機会となった」
  • 「さまざまな業界の実務担当者による率直な意見を聞くことができた」

また、フォーラム全体について「アカデミア、投資家、市場関係者、事業会社の担当者など、登壇者のバランスが非常によく、質の高い内容だった」との評価もいただきました。

当日ご参加いただいた皆様に改めて感謝申し上げます。次年度も、社会的要請や制度動向の最新情報を踏まえ、さらに進化した形でサステナビリティ経営フォーラムを開催予定です。ぜひご期待ください。

<プログラム概要>
「サステナビリティ経営フォーラム2025 本質に迫る対話とデータ活用 〜信頼を築く情報開示と戦略の再構築〜」
サステナビリティ経営を推進するCSuOをはじめとしたCXOや、サステナビリティ推進実務における責任者が直面する課題に焦点を当て、各種セッションを通じて本質的な議論を行うイベント

<実施概要>
開催日時:2025年10月9日(木)13:30開場・14:00開始、19:00終了
開催場所:東京都丸の内(ステーションコンファレンス東京)
主催:シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
参加者数:99社・120名

<主なプログラム

キーノート・パネル

水口 剛 氏(高崎経済大学学長/博士)
塩村 賢史 氏(株式会社大和総研フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー(元 GPIF ESG・スチュワードシップ推進部長))
中久保 菜穂(シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 取締役CSuO)

パネルディスカッション「サステナビリティ情報の信頼性と課題」

大野 美希子 氏(国際監査・保証基準審議会(IAASB)ボードメンバー)
鳥居 夏帆 氏(株式会社日本取引所グループ(JPX)サステナビリティ推進部 )
三井 千絵 氏(株式会社野村総合研究所 プリンシパル研究員)

ワークショップ「第三者保証に耐えうるサステナビリティ情報の収集・開示プロセスの構築」

南原 亨成 氏(有限責任 あずさ監査法人 サステナブルバリュー統轄事業部 ディレクター)
杉本 淳(シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO)

パネルディスカッション「AIによる情報分析の最前線とその課題」

酒井 由紀子 氏(第一生命ホールディングス株式会社 執行役員 G-CSuO(Group Chief Sustainability Officer))
増田 典生 氏(日立製作所 グループサステナビリティ本部 主管 兼 一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事)
中尾 悠利子 氏(関西大学 総合情報学部 教授/博士(経営学)

ラウンドテーブル「サステナビリティデータの経営への活用とテクノロジーの可能性」

土屋 大輔 氏(有限責任あずさ監査法人 サステナブルバリュー統轄事業部 パートナー)
中久保 菜穂(シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 取締役CSuO)

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