【解説】GHGプロトコルスコープ2の改定案を解説:決定版の公開までに企業が備えるべきものは?

【解説】GHGプロトコルスコープ2の改定案を解説:決定版の公開までに企業が備えるべきものは?

GHGプロトコルスコープ2:改定第2フェーズ後、2027年に決定版へ

GHGプロトコルは2025年に企業の購入電力(電気、熱、蒸気を含む)に伴う排出の算定・開示のための「スコープ2に関するガイダンス(2015年)」の改定案を公表し、2026年1月末にパブリックコメントが終了した。
本稿では、同ガイダンスで提案されているスコープ2の考え方の更新について変更点を整理し、企業が備えとしてこの1年間に取り組むべき対応をまとめる。

スコープ2改定のタイミング:なぜ今なのか?

上記ガイダンスは、約10年前の公表以来、購入電力に由来する企業の排出量を算定・報告するための世界的な主要フレームワークとなってきた。IFRS S2、EUのESRS/CSRD、米カリフォルニア州SB 253など、多くの開示制度でもGHGプロトコルの基準が活用されている。

GHGプロトコルの発表(RELEASE: GHG Protocol Opens Public Consultations on Scope 2 and Electricity Sector Consequential Accounting, 2025年)によると、この10年ぶりの改定は「エネルギー購入のあり方の変化と、利用者ニーズの進化を踏まえ、算定の精度を高め、GHG報告の手法を一貫させるとともに、電力の生産・供給の実態に整合する」ことが狙いだ。

エネルギー市場の高度化と開示制度の厳格化を背景に、スコープ2の算定も次の段階へ移行しようとしている。

スコープ2改定案における変更点の全体像

GHGプロトコルのスコープ2改定の全体像においては以下のポイントが挙げられる。

ロケーション・マーケット基準の精度整合の強化

スコープ2の改定案では、現行の電力の排出量を算定するためのロケーション基準とマーケット基準の2本立てを維持しながら、両者の精度と透明性を高める方針が示されている。

なかでも、マーケット基準の時間マッチング(時間単位の一致)とDeliverability(供給可能性)の開示を強化する点が改定の焦点となっている。これには、企業が主張する「グリーン電力」の環境価値について実際に電力系統の物理的実態(いつ・どこで作られ、どこに届くか)との矛盾を防止し、ダブルカウントを削減する狙いがある。

実務上の措置(免除措置)の活用

また、企業のデータ取得能力や運用負荷には差がある。そこで一定条件の免除、既存契約のためのレガシー条項、段階導入など、実務上の措置も挙げられているため、こちらも把握されたい。具体的な措置については、後半で詳しく説明しているので参考にされたい。

以下、改定案の詳細として、マーケット基準・ロケーション基準の考え方や、負荷軽減措置に加えて、改定完了のスケジュールおよび企業に求められる4つのポイントを示している。

GHGプロトコル改定案(スコープ2)の変更点の詳細解説

スコープ2の算定においては、排出係数の決定プロセスとしてマーケット基準(再エネ証書、発電源証明、契約書などの排出係数での算定)・ロケーション基準(地域における平均排出係数での算定)の採用が必要となる。

GHGプロトコルの改定では、それぞれの基準の考え方に対してデータ精度をあげるための以下の要求事項が追加されている。


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<執筆者

マルティネス リリアナ(ESGJournalスペシャリストライター)
サステナビリティ学修士。シンクタンクにて、海洋・大気環境分野を中心とした環境政策・制度検討支援(調査・分析)に従事。また、国際海事機関(IMO)における海洋環境関連条約の技術・政策議論にTechnical Advisorとして参画した経験を持つ。その後、 Big4 ファームにて、気候変動、ネイチャー課題を中心とした企業向けアドバイザリー業務に従事。現在は 非財務情報開示フレームワークからサステナビリティを巡る国際動向まで、企業実務の視点からオリジナル解説およびホワイトペーパーを執筆。

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