SSBJ基準・制度の全体像:決定事項と今後の制度動向

SSBJ基準の公表開示府令の改正により、日本でもサステナビリティ情報の法定開示が本格的に制度化されつつある。一方、現場では「どの媒体で何を開示すればよいか」「制度の全体像がわかりにくい」「実務への影響が把握しづらい」といった課題を抱えている場合もあるだろう。

本稿では、SSBJ基準での開示(サステナビリティ情報に関する法定開示)について、すでに決まっている事項と現在検討中の事項を整理するとともに、今後検討されている制度が企業実務にどのような影響を与えるのかという視点から対応のポイントを整理する。

有価証券報告書への記載事項の変化

SSBJ基準の導入により、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示は大きく見直される。従来は「ガバナンス」「リスク管理」の必須開示を中心に、各社の判断や国際的なフレームワークに基づき開示されていたが。

今後はSSBJ基準に従った記載が求められ、企業の見通し(キャッシュ・フロー等)に影響を与えるリスクや機会について、財務的影響を意識した開示が必要となる。また、報告対象範囲も、財務報告の連結範囲と一致させることや、温室効果ガス排出量(スコープ1・2・3)などの定量的情報を基準に沿って開示することが求められる。

なお、有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示する際、後日発行される統合報告書などに参照させることは認められている。ただし、参照先を特定する必要があり、たとえば、有価証券報告書において「○○ページ」などの具体的に表示することが求められる。

「決まっていること」と「検討中のこと」

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、日本におけるサステナビリティ開示基準の開発を担う主体であり、2025年3月にはSSBJ基準が公表され、サステナビリティ情報開示の制度化が本格的に進んだ。

現在の制度動向においては、 「現状で決まっていること」「今後検討されていること」 の2つに整理できる。

項目主な内容
現状で決まっている事項SSBJ基準の公表、ISSB基準との整合性確認、開示府令改正による制度化、義務化スケジュール、二段階開示の特例、第三者保証の導入に向けた方向性
今後検討・決定予定の事項実務対応基準の確定、適用企業の拡大、保証対象範囲の拡大、ISSBによる新基準開発

現状での決定事項(2026年3月時点)

|制度化と適用スケジュールの確定

2026年2月20日には、金融商品取引法の「企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)」の改正が公表・施行された。これにより、SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報開示が制度として導入されることが正式に決定した。

適用は段階的に進められ、以下の東証プライム上場企業からSSBJ基準の適用が義務付けられる。

  • 平均時価総額3兆円以上の企業:2027年3月期の開示
  • 平均時価総額1兆円以上の企業:2028年3月期の開示

上記の報告企業は、2026年4月からのデータや情報を有価証券報告書の開示に向けて整備する必要がある。なお、上記の義務化対象以外の企業であっても、同基準に従った記載を行うこと(法令上の任意適用)ができることも定められた。

ただし、自社が対象となるスケジュール(強制適用時期)よりも早期にSSBJ基準での開示を表明した場合、その最初の年次報告期間が「最初の報告期間」とみなされるので留意が必要だ。

|開示実務における特例(二段階開示)

金融庁では、制度導入初期の実務負担を考慮し、適用開始から2年間は「二段階開示」が認められる。二段階開示とは、有価証券報告書提出後に、半期報告書の提出期限(事業年度終了後から概ね数か月後)までに、サステナビリティ情報を訂正報告書として提出することを認める仕組みである。
この二段階開示は適用開始日から2年間認められているので、初年度に同時開示ののち、翌年度二段開示ということも可能となる。


ただし、人的資本に関するデータは有価証券報告書の開示の際に間に合わせる必要があるので、留意が必要だ。

|第三者保証の導入の方向性

サステナビリティ情報の信頼性を確保するため、第三者保証の導入も制度として導入されることが前提で検討が進んでいる。法律の整備はまだであるが26年度以降に制度化されると考える。
第三者保証は、SSBJ基準の適用開始時期の「翌期」から義務付けられる予定である。また導入から2年間は、保証の対象範囲が以下に限定される。

  • ガバナンス
  • リスク管理
  • スコープ1およびスコープ2の温室効果ガス排出量

なお、保証の担い手は監査法人に限定されないことになる予定だ。

SSBJ・第三者保証を見据えた保証に関してはお役立ち資料にて詳しく解説している。
SSBJ・第三者保証対応を見据えたサステナビリティ情報管理の実務設計

以下では、SSBJ基準における検討中の事項(適用企業拡大、実務対応基準など)について整理するとともに、これらの事項について今後の実務としてどのように対応したらよいかポイントを解説する。


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<執筆者

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

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