サステナビリティ保証とは:SSBJにおける第三者保証の対応ポイント

※本記事は、2026年2月掲載の記事に2026年10月時点の最新情報に基づき再編集したものである。

サステナビリティ情報開示の制度化が進む中、企業が開示する情報の信頼性をどのように確保するかが重要となっている。その手段の一つが、独立した第三者による「サステナビリティ保証」である。

日本でも、SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報の開示義務化に続き、第三者保証制度の段階的な導入が進められていく。企業のサステナビリティ担当者にとっては、どの情報が保証の対象となるのかを理解するとともに、保証に向けた準備をいつから、何から始めるべきかが実務上の重要な論点となる。

本稿では、SSBJ基準に基づく第三者保証の対象企業・適用時期・保証範囲を整理し、企業が対応に向けて確認しておきたい実務上のポイントを解説する。また、サステナビリティ保証の基本的な仕組みや国際保証基準「ISSA 5000」の概要も後述する。

サステナビリティ保証の概要

サステナビリティ報告の保証とは、サステナビリティレポートやウェブサイトなどで開示されている非財務情報の正確性や規準への適合性を定められた手続きに基づき判断した結果について開示する(いわゆる「お墨付き」)ことである。一方、保証を受ける側は、サステナビリティ情報や開示データなど評価の対象となる資料を整備し、保証手続きに対応する必要がある。

SSBJ基準における第三者保証とは

第三者保証については、SSBJ基準に基づく開示義務化の翌期から段階的に導入する方針が示されており、平均時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業では、2027年3月期からのSSBJ基準に基づく開示に続き、2028年3月期から保証が求められる予定である。

また、国内の保証基準については、2026年4月に企業会計審議会に設置されたサステナビリティ情報保証部会で検討が進められている。国際サステナビリティ保証基準「ISSA 5000」などとの整合性を確保しつつ、国内の制度に対応した保証基準の整備が進められている。

保証の対象

サステナビリティ保証の対象となる企業は以下のとおりである。

  • 時価総額3兆円以上の企業 : 2027年3月期開示 ➡ 2028年3月期保証対象 
  • 時価総額3兆円未満1兆円以上の企業 : 2028年3月期 ➡ 2029年3月期保証対象
  • 時価総額1兆円未満5千億円以上の企業 : 2029年3月期 ➡ 実施時期検討中

保証範囲・水準

日本の第三者保証制度では、保証水準を限定的保証とし、合理的保証への移行は行わない方針が示されている。

また、保証義務化から当初2年間は、保証対象をScope 1・2の温室効果ガス排出量、ガバナンス、リスク管理に限定する。3年目以降の保証範囲については、国際的な動向や国内の実務状況などを踏まえて検討される。

また、保証対象はSSBJ基準に基づく開示情報の一部であり、開示情報全体に保証が付されるわけではないので予め注意しておくとよいだろう。さらに、既に任意の第三者保証を受けている企業についても、制度上求められる保証とは対象範囲や適用基準が異なる可能性があるため、既存の保証内容と新たな制度の要件を確認することが重要となる。

なお、ISSA5000に基づく保証業務が実施する場合、スコープ1,2に関する開示おいては以下の流れ(ポイント)で監査・保証業務が行われる。

  1. 報告規準の適合性確認(例:GHGプロトコルなど)
  2. 内部統制の理解(例:データ収集プロセスの把握)
  3. 十分かつ適切な証拠の入手(例:燃料購入記録、電力使用量請求書)
  4. 算定方法の整合性(例:計算ロジックとの突合)
  5. 分析的手続(例:前年との比較)
  6. 保証の最終化

保証を受けるために知っておきたいポイント

第三者保証への対応は、保証を受ける年度になってから始めるのではなく、開示情報の収集・算定・管理プロセスを事前に確認しておくことが重要となる。特に、データの収集方法や算定根拠、担当者による確認・承認の流れを整理し、必要な情報を継続的に管理できる体制を整えておきたい。

以下では、保証に向けて企業が確認しておきたい実務上のポイントを整理する。

合理的保証か限定的保証か

「保証」の考え方には以下の2つの種類があり、求められる保証が異なるため留意が必要だ。

種別内容
合理的保証・保証業務リスクを受入可能な低い水準まで低減し、積極的な形式で結論を表明するもの。
※保証された内容は低いリスク水準にあり、「重要な点において適正に表示されている」であると明言
限定的保証・合理的保証と比べて実施する保証手続の種類・時期・範囲が限定され、保証業務リスクを合理的保証よりも高い水準に設定するもの
※「重要な点において適正に表示されていないと信じさせる事項は認められなかった」という形式で結論を表明する。

保証業務の流れ

日本国内でも上場企業を中心に保証を受ける事例が散見される。林教授の研究によれば、ISAE3000もしくはISAE3410に準拠した保証を受けている企業が半数近くにのぼる。SSBJ基準の公布後の保証業務の実施においても、一般的に見受けられる保証業務と類似した対応となるだろう。主に以下のような確認作業が想定される。

  • 質問:企業の担当者に対して、情報が正しく集計されているかどうか質問
  • 閲覧:企業が提供する資料やデータを見て、情報の網羅性や信頼性を確認
  • 分析的手続:提供されたデータを分析して、不自然な点や間違いがないかチェック
  • 計算突合:企業が提供した数値を再計算して、合っているかどうか確認
  • 突合:データの根拠となる資料と照らし合わせて、正しいかどうか確認
  • 観察:企業の業務プロセスやデータの収集方法を直接観察して確認
  • 視察:実際の現場を訪れて、データの収集や記録が正しく行われているか確認

保証業務でのポイント

保証業務に対応していくために、着手できるところから始めておくとよいだろう。なお、下記におすすめするポイントは、自社が制度・規制上の保証義務の対象とならない場合であっても、サステナビリティ情報開示自体の質の向上や取引先の要請への対応など、他にもメリットがあると思われる。

データの正確性

保証業務において基本となるのは、収集されたデータが正確であることであろう。正確さの判断はデータを集める仕組みや管理するツールにエラーやリスクが発生しないか確認されたい。保証業務においても、ルールやツールの整備状況は確認ポイントの1つであり判断に影響する可能性もあるだろうう。また、データの根拠が客観的であるかどうかも重視される可能性がある。

自社のデータ収集や管理がマニュアル作業に依存するなど、リスクが高い仕組みになっていないか、またはリスクを低減する仕組みがあるか今一度見直すとよいだろう。

体制構築

データ収集や計算ロジックなどを管理する体制も重要なポイントだろう。属人的かつ個別最適化している状態では、開示情報の正確さを実現できるとは判断されにくい場合がある。なお、ISSA5000では、こうした保証に耐えうる体制として「情報の正確性 ・ 網 羅性の検証や十分かつ適切な証拠とはなにか、規定の検討」がされている。

サステナビリティ情報開示は、担当部署において実際のプロセスがブラックボックス化してい場合、まずは計算方法や使われているExcelなどを整理するとよいだろう。そして、自社における開示プロセスの自動化がどこまで出来ているか見直すとよいだろう。

<実務ポイント>
SSBJ第三者保証に向け今から確認しておきたい資料・記録を紹介 について整理

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参考)

国際サステナビリティ保証基準 5000(ISSA5000) とは

国際会計士連盟の「International Auditing and Assurance Standards Board」は、 国際サステナビリティ保証基準 5000 (International Standard on Sustainability Assurance 5000, General Requirements for Sustainability Assurance Engagements: 以下、ISSA 5000)を策定している。

ISSA5000のポイントは以下のとおり。

  • 国際的なサステナビリティ情報開示基準(規準)を考慮した包括的な保証基準
  • 保証業務提供者は会計士以外も可能
  •  ISAE3000を活用

既にISAE3000に準拠した保証を受けている場合には、下記の論点を把握しておくことで、新しい保証基準への対応ができるだろう。

  • 保証水準の認識(限定的保証VS合理的保証のどちらがよいか)
  • 報告規準の適合性・・・(開示された情報の優先順位・マテリアリティが考慮されているかを判断する要件はどうするか)
  • 保証業務の範囲・・・(保証対象とする開示情報の範囲や境界線をどこまでにするか)
  • 証拠(情報の信頼性、及び十分かつ適切な証拠の構成要素)・・・(信頼できるデータがどうか保証の目的に照合する情報の定義はどうするか)
  • 内部統制システム・・・(内部統制の構築されているかどうかの定義をどうするか)
  • 保証業務における重要性・・・(情報に虚偽がないか定量・定性的な判断をどうするか)

まとめ

日本国内では、古くから第三者保証を導入している上場企業が多いため、ISSA5000の開発やSSBJ基準の適用により、導入企業が増えることが予想される。国際的にも、サステナビリティ情報開示の保証は必須の動きがあるため現状できるところから対応しておくとよいだろう。

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<執筆者>

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

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