オーストラリアの金融サービス規制機関であるオーストラリア健全性規制庁(APRA)は、銀行、保険会社、スーパーアニュエーション受託者が気候変動による財務リスクを管理するための支援を目的とした、最終的な健全性実務ガイド「CPG229」を発表した。
このガイドの目的は金融機関が気候変動から生じるリスクと機会を理解し、投融資・引受けの
決定を十分な情報に基づいて行い、適切なガバナンス、リスク管理、シナリオ分析、情報開示の実施することである。焦点となる主な分野は、高リスク分野を含むリスクの特定と測定、リスクの定量的・定性的モニタリング、リスクと機会を理解するためのシナリオ分析の検討、リスクを管理・軽減するための顧客や取引先との関わり、報告などだ。
APRAによると、このガイドは、規制対象となる企業が、新たな規制要件や義務を課すことなく、既存のリスク管理やガバナンスの実践の中で、気候関連のリスクや機会を管理できるようにすることに重点を置いている。
最も注目すべき点は、このガイドには規制対象企業による気候変動に関する情報開示の義務化は含まれておらず、代わりに、金融機関は「追加的な任意の情報開示が、透明性を高め、気候変動リスクを測定・管理するための金融機関のアプローチを広く市場に確信させる上で有益であるかどうか」を検討すべきとしている点だ。
このアプローチは、気候変動リスクに関する報告を義務化する動きが活発化している他のいくつかの市場の動きとは対照的である。例えば、英国は先月、企業や金融機関に気候関連の情報開示を義務付ける法律を導入する正式な計画を発表しており、米国の証券取引委員会は、企業による気候リスク報告の義務化に向けた規則案を年内に策定する計画を検討している。
また、米国の証券取引委員会は、年内に企業による気候変動リスク報告の義務化のための規則案を作成する予定であることを議論している。
このガイドの発表は、オーストラリア政府が最近発表した2050年までに排出量をネット・ゼロにするという公約を受けたもので、法律や税金ではなく、技術への投資と開発に大きく依存した計画に基づいている。