
10月22日、ニュージーランド政府は、企業の成長支援と資本市場の強化を目的とした新たな制度改革を発表した。スコット・シンプソン商務・消費者担当大臣は、上場企業への気候関連報告義務の見直しなど、より「常識的」な変更を行うことで、企業活動の負担軽減と市場の競争力向上を図る方針を明らかにした。
シンプソン大臣は「強制的な気候報告制度は、上場企業に多大なコストを強いている。ある企業はコンプライアンスに200万ドルを費やしたと聞いており、本来なら電気自動車導入など、より実践的な排出削減に投資できたはずだ」と指摘した。同氏によると、報告制度のコストやリスクが新規上場を妨げる要因になっている可能性もあるという。2020年以降、NZX(ニュージーランド証券取引所)では34社が上場(うちIPOが6社)した一方で、37社が上場廃止となっている。
政府は、制度の実態を見直した上で、以下の3つの主要な調整を実施する。
- 上場企業の報告義務発生基準を市場時価総額6,000万ドルから10億ドルへ引き上げ、制度目的と市場健全性の両立を図る
- 取締役および企業の法的責任を適正化し、不要なリスクとコストを低減しながら、開示内容の信頼性を維持
- 投資信託などの運用商品を報告義務の対象から除外し、投資家にとって有益性の低い開示を整理
シンプソン大臣は「気候関連報告制度は前政権が導入したもので、世界初の試みだった。理念は立派だったが、実際には負担が大きく、新規上場へのハードルとなっていた。初年度の運用を踏まえ、より現実的な形に修正する」と語った。
さらに政府は、国民の退職積立制度「キウィセーバー」などの投資信託についても、運用資産の内訳をより明確に開示する方針を示した。投資家からは、未上場資産への投資状況が見えにくいとの指摘があり、改正後は公開・非公開市場の比率や、ニュージーランド国内外の投資比率を明示する形へ改める。
これらの措置は「金融市場行動改正法案(Financial Markets Conduct Amendment Bill)」の一環として国会に提出される予定で、財務・歳出委員会が報告期間を延長して審議を行う。シンプソン大臣は「今回の見直しは、企業に過度な負担をかけずに健全な市場を維持し、投資家にとって有用な情報を確保することを目的としている」と強調した。
(原文)Commonsense changes to boost capital markets
(日本語参考訳)資本市場を活性化させる常識的な変化
















