
7月15日、サステナビリティ(持続可能性)評価を手掛ける仏エコバディスが発表した調査によると、米国企業の87%が今年、サステナビリティへの投資を維持または増加させていることが分かった。一方で、政治的な議論などを背景に、取り組みを公にアピールするのを控える「グリーンハッシング」という傾向が広がっている実態も明らかになった。
この調査は、売上高10億ドル以上の米国企業に勤める幹部400人を対象に実施された。
調査結果から見えてきた主な傾向は以下の通り。
「グリーンハッシング」の広がり
全体の約3分の1(31%)が、サステナビリティへの投資は増やしつつも、対外的な公表は減らしていると回答。8%は公言を完全にやめたが投資は継続している。企業の多くが、世間の評判よりも、サプライチェーンの強化やリスク管理、成長といった実利を重視し、水面下で取り組みを進めている姿が浮き彫りになった。
競争優位性としてのサステナビリティ
全回答者の65%が、サプライチェーンのサステナビリティを「リスク削減やブランド価値向上につながる競争上の優位性」と捉えている。また62%は「顧客の獲得と維持に役立つ」と回答しており、財務担当役員の52%も「成長の原動力」と見なしている。
ESG規制緩和への懸念
経営層の約半数(47%)は、ESG(環境・社会・企業統治)に関する規制が緩和・撤廃された場合、サプライチェーンの混乱が増加すると懸念を示した。また、全幹部の59%が、規制緩和によって不公正な労働慣行が増えると予測している。
規制対応の遅れ
欧州連合(EU)や米加の主要なESG規制について、期限通りに遵守できる見通しが立っている企業はわずか13%だった。規制対象企業の最大19%は、サプライヤーのESGデータ収集にさえ着手しておらず、企業の多くが規制対応に苦慮している実態が示された。
データ格差を埋める技術投資
幹部の33%が、不正確と知りながらも推定値に基づくESGデータを報告した経験があると認めた。このデータギャップを埋めるため、57%がESGリスク評価ツールを、49%がサプライヤーとの連携プラットフォームを導入するなど、技術への投資を加速させている。89%の企業が今後1年以内の追加投資を計画している。
エコバディスの共同創業者兼共同CEO、ピエールフランソワ・タレール氏は「サステナビリティを巡る議論が白熱する中でも、経営者たちはそれがサプライチェーンを機能させ、顧客を惹きつけるという現実に焦点を当てている。リスクを先読みし、変化する規制に対応するため、先進企業はツールへの投資を優先している」と分析している。
(原文)EcoVadis Study: 87% of U.S. Companies Quietly Boost Sustainability Spending Despite Regulatory Debate and Uncertainty
(日本語参考訳)EcoVadis調査:規制に関する議論や不確実性にもかかわらず、米国企業の87%がサステナビリティへの支出をひそかに増加