
3月4日、ウェルズ・ファーゴ(WFC.N)は、自行が融資を行う企業の排出量について、2050年までにネットゼロを達成するという目標を撤回すると発表した。銀行業界ではサステナブル融資の方針が再考されつつある。
同行の説明によれば、従来の目標は「公的政策や消費者行動、技術革新など、銀行のコントロールを超える要因が多く存在する」ことを前提としていたが、顧客のグリーン化を実現するために必要な条件が整っていないという。
この動きは、政治状況の変化を背景に金融機関全体がESG(環境・社会・ガバナンス)へのコミットメントを見直している現状を示すものでもある。ドナルド・トランプ大統領就任後、パリ協定からの脱退や気候関連国際協力の停止などが進み、気候問題を巡る国際的な取り組みに変化が生じている。
ウェルズ・ファーゴはまた、2030年を目標とした特定セクター向けの排出量削減目標も取り下げる方針であるが、自社の事業運営における2030年および2050年の排出削減目標は継続するとしている。
これに対して、環境団体シエラクラブでサステナブル金融キャンペーンを指揮するベン・カッシング氏は「ウェルズ・ファーゴがネットゼロ目標を放棄するのは責任放棄に他ならない」と批判している。同社は2024年12月には、温室効果ガス排出量削減を目指すグローバル銀行の連合「Net-Zero Banking Alliance」からも脱退した経緯がある。
【参照ページ】
(原文)Wells Fargo drops financed emissions target amid ESG rethink
(日本語参考訳)ウェルズ・ファーゴ、ESG再考の中で融資による排出量目標を取り下げ