シンガポール、金融セクターの持続可能な金融スキルアップに約39億円を投資

シンガポール、金融セクターの持続可能な金融スキルアップに約39億円を投資

4月17日、シンガポールの中央銀行であり金融監督機関であるシンガポール金融管理局(MAS)は、金融サービス部門における持続可能な金融の専門家を育成するため、今後3年間で3500万シンガポールドル(約39億円)を割り当て、スキルアップと再教育の取り組みを支援すると発表した。

この新たな投資発表は、MASとInstitute of Banking and Finance (IBF)が発表した「サステイナブル・ファイナンス・ジョブ・トランスフォーメーション・マップ(JTM)」と同時に行われたもので、今後10年間の東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるサステイナブル・ファイナンス市場は4兆~5兆シンガポールドル(約453兆~567兆円)に達すると予測する新たな調査結果であり、こうした機会を捉えるために金融サービス労働者のスキルアップの必要性に拍車をかけている。

シンガポールのKPMGが実施し、ワークフォース・シンガポール(WSG)が支援した新しいJTMの調査では、リスク、コンプライアンス、商品ソリューションから営業、流通、リレーションシップ・マネジメントに至る幅広いキャリア・トラックにおいて、5万人以上の金融サービス専門家が、持続可能な金融に関連する新たな業務を、中程度から高度の程度で追加されると予測している。専門家にとっての新たな仕事には、サステナビリティ・リスクを企業管理システムに組み込むことや、サステナブル・ファイナンスのニーズを満たすための商品組成などが含まれる。

具体的には、コーポレート・バンキングのリレーションシップ・マネージャーは、セクターごとの脱炭素化の道筋や持続可能な金融手法に関する知識を必要とし、顧客にサービス内容を説明する必要がある。また、ポートフォリオ・マネージャーは、投資家の持続可能性に関する戦略や嗜好に合った投資ポートフォリオを構築するために、持続可能な投資管理のスキルが必要となる。また、サステナビリティ・リスクや戦略など、まったく新しい役割の出現も予測している。

今回の新たな投資発表は、MASが昨年発表した「ネット・ゼロのための金融(FiNZ)行動計画」に続くもので、アジアにおけるネット・ゼロ移行を促進することを目的とした資金を動員するための一連の戦略であり、シンガポールにおける脱炭素化活動である。

MASは、金融人材のスキルアップと再スキルアップのための投資を通じて、サステナブル・ファイナンス・コースの拡充、サステナブル・ファイナンスに焦点を当てた2つの新しい学部課程の開発、高等教育機関による65以上の新しいエグゼクティブ・コースとサステナブル・ファイナンスの新しいエグゼクティブ修士課程の今年中の開設計画、サステナブル・ファイナンスのスキル習得を認定する業界専門家向けのIBFスキルバッジの導入、雇用主によるスキルに基づく雇用の支援など、重要なイニシアティブを強調した。

【参照ページ】
(原文)MAS sets aside $35 million to Support Upskilling Singapore’s Financial Services Sector Workforce in Sustainable Finance
(日本語参考訳)シンガポール金融庁、持続可能な金融に関するシンガポール金融サービス部門の人材育成支援に3,500万ドルを確保

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