欧州連合(EU)の市場規制機関である欧州証券市場庁(ESMA)は、流動性リスク・市場リスク・信用リスク・伝染リスク・オペレーショナルリスクなどの既存のリスクカテゴリーに加え、気候変動リスクを新たなカテゴリーとして設定した。
ESMAは、投資家保護の強化と安定的かつ秩序ある金融市場の促進を主な目的として2011年に設立し、投資家・市場・金融安定性に対するリスクの評価を主要な活動の一つとしている。本日発表した半期報告書「TRV(Trends, Risks and Vulnerabilities)」では、新たに「環境リスク」というカテゴリーを追加し、最も顕著なリスクとして、まずは気候に焦点を当てると述べている。
新たな気候リスクカテゴリーは、物理的リスクや移行リスク、グリーンファイナンスに関連する潜在的なリスクを捉えることを目的としている。
ESMAは、TRVの新レポートとともに発表した記事の中で、次のように述べている。
「気候変動が我々の世代の課題となっており、世界経済や経済主体(家計、企業、政府)に大きな影響を及ぼす可能性があるという点で、幅広い合意が得られています。このように、気候変動は世界の金融システムにも大きな影響を与えますが、気候変動と金融リスクの潜在的な影響や伝達経路についての一般の理解はまだ進んでいません。つまり、今後何十年にもわたって何もしないでいると、気候変動に対処したり、その影響を緩和するために今日とる行動に比べて、潜在的なコストが不均衡に高くなるということです。」
本記事では、環境リスクがEU証券市場とその参加者にどのような影響を与えるかについての規制当局の見解と、環境リスクをリスク評価とモニタリングの枠組みに統合するためのESMAのアプローチについて概説している。
規制当局が認識している主なコア・リスクには、投資家の気候リスク認識の急激な変化による市場センチメントの急激な変化・グリーンウォッシュ・気象災害などがあり、これらは物的資産や金融資産の損失を引き起こす可能性や政策や法律上の措置にもつながる。またESMAは、グリーン金融商品の情報開示を強化し、ラベル付きのサステナブル・ファイナンス商品の増加による透明性の向上、および気候に特化したリスクモニタリング指標の開発の必要性についても議論している。
【参照ページ】
(原文)WEBINAR ON ESMA’S REPORT ON TRENDS, RISKS AND VULNERABILITIES NO.1 2022