欧州理事会と欧州議会、EUの亡命・移民制度改革で政治的合意

12月21日、欧州理事会のスペイン議長国と欧州議会は、亡命と移民に関する5つのEU法規制改正案で政治的合意に達した。

スペイン議長国と欧州議会が合意した5つのEU法は、非正規移民がEUに到着した際のスクリーニングから、生体情報の採取、申請者の権利も強化する庇護申請書の作成・処理手続き、どの加盟国が庇護申請書の処理に責任を持つかの決定に関する規則、加盟国間の協力と連帯、移民の手段化のケースを含む危機的状況の処理方法まで、庇護と移民管理のすべての段階に触れている。

新規則が採択されれば、欧州の庇護制度はより効果的なものとなり、移民が最も多く到着する加盟国の負担軽減により、加盟国間の連帯が高まることになる。

今回合意したのは、亡命手続規則(APR)、亡命・移民管理規則(AMMR)、非正規移民に関する規則、EURODAC規則、移民危機対処フレームワークの5つ。

APRでは、亡命庇護申請者の受入手続をEU単位で共通化。これにより手続の迅速化と審査国の負担軽減を図る。亡命申請者は、域外国境やトランジットゾーン付近、あるいは国の領域内の他の指定された場所に居住することを義務化。申請者には一定のルールに服することも課される。

AMMRは、現行のダブリン規則に替わる制度として導入される。ダブリン規則では、庇護申請者を居住国とは別のEU加盟国に移送することができるルールが設けられていたが、当該ルールを厳格化。庇護申請者は最初に入国または合法的に滞在した加盟国で申請することを義務付ける。但し、申請者がEU加盟国の教育機関の卒業証書(6年以内のもの)を所持している場合、当該加盟国が国際保護申請の審査に責任を持つこととした。

非正規移民に関する規則では、EU共通の手続を設置。陸路、海路、空路による無許可の対外国境通過に関連して逮捕された者、海上での捜索救助活動後に下船した者、対外国境通過地点または通過地帯で国際保護を申請したが入国条件を満たしていない者に対して適用される。

EURODAC規則では、顔画像等の生体認証データを登録できるよう機能を拡張。亡命申請者だけでなく、不法移民の登録も可能となり、データベースで監視できる人の対象が大幅に拡大する。一時的保護者もEURODACに登録するルールに変更し、これによりEU単位での管理が容易になる。生体データの取得義務対象年齢は、現行の14歳以上から6歳以上に拡大される。

移民危機対処フレームワークは、移民危機発生時の緊急措置に関するもの。EU理事会で承認されれば、上記の規定の逸脱が合法化される。亡命庇護申請受付も、7日ではなく最大4週間にまで延長できるようになる。

【参照ページ】
The Council and the European Parliament reach breakthrough in reform of EU asylum and migration system

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