11月14日、米連邦政府の下に設置されている米国地球変動研究プログラム(USGCRP)は、気候変動に関する政策提言の役割を果たす「全米気候評価報告書(National Climate Assessment)」第5次報告書(NCA5)を発表した。
UNGCRPは、1990年地球変動研究法(Global Change Research Act)に基づき設置された政府機関。4年毎以内に連邦議会と連邦政府大統領に対し、地球規模の変動を報告することが義務付けられている。NCA5はバイデン政権になって初のNCAである。
同報告書は、豪雨、旱魃、洪水、山火事、ハリケーン等の気候関連の異常気象が、急速に強まっており、米国に毎年1,500億米ドル(約22.5兆円)以上の損害をもたらしていると主張。特に、低所得コミュニティに対する損害が大きい。10億米ドル(約1,500億円)規模の災害に関しては、1980年代には4カ月に1度の発生にとどまっていたのに対し、最近では平均して約3週間ごとに起きている。
気候変動緩和については、米国では人口とGDPが増加しているにも関わらず、CO2排出量は減少していると指摘。バイデン大統領は、政策により全米でクリーンエネルギーの雇用を増加させながら、2030年までに排出量半減を目指す考え。ただし、1.5℃目標の達成には、風力発電や太陽光発電の設備容量を増やす等、現在利用可能で費用対効果の高い排出削減オプションを広く実施した上で、大気中から炭素を除去する技術や方法を急速に拡大していく必要があるとした。
NCA5では、初めて「社会システムと正義」の章も設けられ、気候変動緩和や適応に起因した移住やエネルギー転換について、経済格差を考慮しながら勧めていく必要がある点について言及。NCA5では、公正な移行も重視し、負担の大きいコミュニティへの影響の軽減、十分なサービスを受けていないコミュニティへの資源の増加、多様な世界観、文化、経験、能力の緩和策と適応策への統合が必要であるとした。
【参照ページ】
(原文)FACT SHEET: Biden-Harris Administration Releases Fifth National Climate Assessment and Announces More Than $6 Billion to Strengthen Climate Resilience Across the Country
(日本語参考訳)米政府、第5次全米気候評価報告書を発表