11月22日、グローバル・プロフェッショナル・サービス・ファームであるEYが発表したサステナビリティ最高責任者(CSO)を対象とした新しい調査によると、経済的・地政学的混乱の中で、企業のサステナビリティ・イニシアティブ、特に気候変動への対応に関する進捗は停滞しており、排出量削減のペースは鈍化し、サステナビリティ支出の伸びも鈍化している。
EYは、「2023年サステナブル・バリュー調査」のため、米州、アジア太平洋地域、欧州・中東・アフリカ地域の23カ国、10業種、売上高10億ドル(約1,494億円)以上の企業のCSOおよびサステナビリティ・リーダー520人を対象に調査を実施した。
その結果、温室効果ガス(GHG)排出量の平均減少率は20%で、昨年の調査の30%から減少していること、気候変動に関連する組織の行動数は平均4件で、前回の平均10件から減少していること、企業の気候変動目標の達成期限は中央値で2036年から2050年に延長されていることなどが報告された。
本調査結果は、EYが企業財務のシニアリーダーを対象に最近実施した別の調査結果とも一致しており、同調査によると、持続可能性は依然として投資の最優先事項である一方、現在のインフレと地政学的に不安定な環境下では、短期的な収益目標を達成するために短期的な予算削減を経験する可能性が最も高い分野でもあった。
このような結果は、CSOの新しい調査にも反映されており、回答者のうち、気候変動に対処するために今年支出を増やす予定があると回答したのはわずか34%であった(昨年は61%)。
また、気候変動対策をリードする企業と遅れをとる企 業の格差が拡大していることも明らかになった。測定、 報告、オペレーション、サプライチェーンなど一連の気候 関連指標でリードしていると評価された「ペース セッター」の76%が、持続可能性支出を増やす計画を 報告しているのに対し、「オブザーバー」と分類された企 業ではわずか7%であった。また、「ペースセッター」の割合も、前年の32%から今年は7%と、大幅に減少している。
回答者の半数以上が、気候変動への取り組みから期待以上の財務的価値を得ており、3分の2近くが製品価値やブランド価値の予想を上回る向上を経験している。
サステナビリティリーダーは、気候変動への取り組みから得られる利益について特に明るい様子で、ペースセッターの89%が顧客価値、79%が従業員価値、79%が財務的価値において予想を上回る価値を獲得したと報告している。
報告書によると、サステナビリティの取り組みが停滞する中、サステナビリティの専門家たちは仕事への不満を感じているようだ。報告書によると、自分の職務に「非常に満足している」と答えたCSOはわずか17%で、42%が今後1年間は現在の雇用主にとどまることを確約していないと答えている。調査では、組織の持続可能性を効果的に推進するために必要なリソースと影響力を備えているのは、回答者の5人に1人程度であると評価された。これらの「変革的CSO」のうち、満足度ははるかに高く、78%が現在の職務に留まることを確約していると回答している。
【参照ページ】
(原文)Businesses revise climate targets as reality of long-term sustainability transformation hits
(日本語参考訳)EY調査:企業の気候変動対策への関心が鈍化