6月22日、オルタナティブ投資データおよびインサイトを提供するPreqinの調査によると、プライベート・マーケット投資家の4分の3近くが、ESG関連の懸念を理由に投資機会を断ると回答しており、うち29%はすでに断ったと回答している。
本調査は、Preqinの年次ESGレポート「オルタナティブ投資におけるESG 2023」の一部であり、オルタナティブ投資家によるESG戦略への資金流入が急増していること、特にインパクト・ファンドの成長が著しいことを示している。
調査によると、プライベート・エクイティ、プライベート・デット、不動産、インフラを含む資産クラスの投資家の60%以上を含め、プライベート・マーケット投資家の半数以上が積極的なESG方針を採用しているか、今後1年以内に採用する予定であることが分かった。資産クラス全体では、ESG方針を統合する予定のない投資家が50%に達したのはヘッジファンドのみであった。
本レポートでは、過去数年間にプライベート・マーケット向けESGファンドの資金調達が急増し、2022年の資金調達額は290億ドル(約4兆円)から920億ドル(約13兆円)へと2020年以降3倍以上に急増していることを明らかにしている。
アセットクラス別では、プライベート・エクイティが長期的にESG資金調達の主役となっており、2014年以降、資金調達額の約半分を占めている。しかし、「本質的な経済発展を支援する能力を持つことから、社会的・環境的変化をもたらすユニークな立場にある」として、インフラファンドが急速にシェアを伸ばしている。過去2年間で、インフラESGファンドは710億ドル(約10兆円)を調達し、プライベート・エクイティが調達した750億ドル(約10兆円)とほぼ肩を並べた。
ESGファンドの資金調達額の急増と並行して、ESGファンドの平均規模も大幅に拡大しており、2017年には4億ドル(約572億円)以下であったものが、2022年には5億7500万ドル(約822億円)にまで拡大している。しかし、Preqinによると、小規模ファンドがESG統合をますます採用するようになるにつれ、この傾向は逆転するという。2023年から現在まで、資金調達額全体が減少しているにもかかわらず、ESGファンドの数は増加しており、ファンドの規模が小さくなっていることを示している。
インパクト投資がニッチ戦略から主流になるにつれ、インパクト・ファンドが急成長している。インパクト・ファンドの資金調達額は、前年の130億ドル(1.8兆円)未満から2022年には340億ドル(約4.8兆円)近くに急増し、2019年には26億ドル(約3,720億円)に過ぎなかった。欧州の投資家がESG資金調達の大半を占め、2014年以降の資金調達額の79%を占めているのに対し、北米の投資家はインパクト資金調達の大半を占め、過去10年間で53%を占めている。
同レポートは、オルタナティブ投資家がESGを採用する主な要因も強調しており、回答者の55%がESGと財務パフォーマンスとの関連性が証明されていることを理由に挙げている。興味深いことに、ESGファンドのパフォーマンスが重要な原動力とされているにもかかわらず、ESGファンドのパフォーマンスが向上する傾向があると回答したのはわずか23%で、55%は他のファンドと同程度のパフォーマンスが得られると回答している。報告書によると、「投資家はESGを下振れリスクを管理する手段として考えているようだ」という。
【参照ページ】
(原文)ESG in Alternatives 2023
(日本語訳)オルタナティブ投資におけるESG 2023