欧州委員会、ESG格付けプロバイダーの規制案を発表

6月13日、欧州委員会は、ESG格付けプロバイダーを規制する新たな提案や、EUタクソノミーの下での持続可能な経済活動に関する新たな基準の導入など、持続可能な金融枠組みの強化を目的とした一連の施策を発表した。

持続可能な金融の枠組みは、2030年までに温室効果ガス(GHG)のネット排出量を55%以上削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという欧州グリーンディールの野望を含む、EUの持続可能な目標に必要な資金の流れを促進することを目的としている。

欧州委員会は、グリーンディールの目標を達成するためには、年間約7,000億ユーロ(約100兆円)の投資が必要であり、その大部分は民間資金によるものであると推定している。

枠組みの主要な構成要素には、EUタクソノミー、企業や投資家のための情報開示と報告に関する規則、持続可能な投資ソリューションの開発やグリーンウォッシュの回避を可能にする基準やラベルなどのツールが含まれる。

近年、投資家がESGを考慮した投資プロセスを組み込むことが増えているため、ESG格付けセクターの規制を求める声が高まっている。しかし、プロバイダーの活動やビジネスは一般的に市場や証券規制当局の対象外となっている。

2021年初頭、欧州の市場規制当局であるESMAは、欧州委員会の金融サービス調整官Mairead McGuinnessに書簡を発行し、ESG格付けセクターの現在の規制対象外の状態とその結果としての透明性の欠如が、投資家に潜在的リスクをもたらすと助言した。2021年7月、欧州委員会は新たな「持続可能な金融戦略」を発表し、その中でESG格付の信頼性・比較可能性・透明性を高めるための行動をとることを約束し、その後、ESMAに対して市場参加者の検討を開始するよう要請。

新提案では、ESG格付けプロバイダーは、そのサービスの品質と信頼性を確保するためにESMAの監督を受けることになり、プロバイダーは「厳格で体系的、客観的で検証の対象となる方法論」を用いることが求められることになる。また、潜在的な利益相反を防止するための組織要件や、プロバイダーの格付け活動の基礎となる方法論、モデル、主要な格付け前提に関する透明性ルールも提案されている。

【参照ページ】
(原文)Sustainable Finance: Commission takes further steps to boost investment for a sustainable future
(日本語訳)欧州委員会、ESGレーティング・プロバイダーの規制案を発表

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