5月25日、国際エネルギー機関(IEA)は、報告書「世界エネルギー投資2023」を発表した。クリーンエネルギー源や技術への投資は化石燃料への投資を上回り続け、その差は2023年には約70%に達し、太陽光発電は今年、世界で初めて石油生産を上回る資本を集める勢いであることが明らかになった。
同報告書によると、世界のエネルギー投資は、昨年の約2.6兆ドル(約363兆円)から、2023年には2.8兆ドル(約391兆円)に達するとされており、その増加の大部分は、再生可能電力、原子力、グリッド、ストレージ、低公害燃料、効率改善、最終用途の自然エネルギーおよび電化などのクリーンエネルギー分野の成長によってもたらされる。
全体として、クリーンエネルギーへの投資は今年1.7兆ドル(約237兆円)以上に達すると予想され、化石燃料への投資を約70%上回るとともに、前年比で約8%、クリーンエネルギーと化石燃料への投資がそれぞれ1.1兆ドル(約153兆円)ほぼ同等だった過去5年間と比べると50%以上増加する見通しである。
クリーンエネルギー投資拡大の最大の原動力は再生可能エネルギーで、2023年には6,500億ドル(約90兆円)以上の資本を集め、前年比11%増、過去5年間では75%増となる。また、電気自動車(EV)の急成長も増加の大きな要因として浮上しており、2018年以降800%以上増加し、今年は約1,300億ドル(約18兆円)に達している。この2つのカテゴリーを合わせると、過去5年間のクリーンエネルギー投資の増加のおよそ3分の2を占めている。
再生可能エネルギーの中では、太陽光発電が主要な成長ドライバーとなっており、今年は約3,800億ドル(約53兆円)の資本を集め、約3,700億ドル(約51兆円)と推定される石油生産上流への投資を初めて上回った。
過去数年間のクリーンエネルギー投資の大幅な伸びを指摘する一方で、過去2年間の投資の伸びの90%以上が中国とEUや米国などの先進国で行われており、同分野への集中が顕著であることも明らかにした。
また、クリーンエネルギーへの投資が化石燃料を上回っている一方で、後者のカテゴリーはCOVID時代の急減した2020年以降、投資の伸びが順調に伸びており、今年は2019年の水準とほぼ同じ約1兆500億ドル(約146兆円)に達すると予測されていることも判明した。
上流の石油・ガスへの支出は今年7%増加するとされているが、報告書は、中東の国営石油会社が投資を増やしている唯一の石油生産者の一つであると指摘し、天然ガスの支出の増加は、主にロシアのウクライナ侵攻に伴う供給減を補うために推進されているようである。
これらの要因に加え、長期的な需要の不確実性、コスト懸念、投資家の圧力が、石油・ガス会社の資本配分を増産よりもリターンに向かわせているようだ。例えば、石油・ガス業界の現金支出分布に占める石油・ガス資本支出の割合は、2008年~2017年の各年の80%以上から、2022年には半分以下に減少し、配当、自社株買い、純負債返済は52%に達している。
【参照ページ】
(原文)World Energy Investment 2023
(日本語参考訳)世界のエネルギー投資額 2023年