PwCとWorkiva、85%の企業が、ESG報告要件に対応するテクノロジーを備えていないことを懸念
3月7日、世界的なプロフェッショナルサービス企業であるPwCと、ビジネスデータおよびレポートソリューションプロバイダーであるWorkivaは、新しい調査結果を報告した。本調査によると、ほぼすべての米国公開企業は、証券取引委員会(SEC)の気候関連開示規則の施行時期にかかわらず、同規則への対応を開始する可能性がある。しかし、ほとんどの企業は、規則の要件を満たすための技術、人員、予算の課題に直面している。
本調査では、PwCとWorkivaが、米国を拠点とする売上高5億ドル(約683億円)以上の上場企業の上級幹部300人を対象に調査を依頼した。
SECは2022年3月に気候変動開示規則案を発表し、米国企業に対し、自社の事業が直面する気候変動リスクとそのリスクへの対応計画に関する情報、および企業の事業上の気候変動フットプリント、場合によってはバリューチェーン全体で発せられる排出量を詳述する指標の提供を義務付けるとしている。この提案に対して約15,000件のコメントが寄せられたため、最終規則の公表は延期され、現在は調整を加えながら4月に公表される予定となっている。
本調査によると、大半の米国企業のリーダーはすでにESG報告をほぼ受け入れており、法案が遅れてもSECの気候関連開示規則への準拠を推進する予定であることが判明した。調査回答者のうち、最終規則の公表を待ってコンプライアンスを進めると答えたのはわずか2%。70%は公表のタイミングに関係なく進める予定で、28%は潜在的なスケジュール次第で推進する可能性があるとした。
また、SECの提案によってサステナビリティ報告への取り組みが進んでいる。95%が、規則案が発表される前よりもESG報告を優先していると報告し、89%が、現在すでにいくつかのESGデータを報告していると回答した。
しかし、ESGや気候関連の報告が広く受け入れられている一方で、多くの企業でSECの提案する開示規則に対応する準備が整っていないことも示された。多くの経営幹部が、テクノロジーやスタッフの不足、潜在的なコンプライアンスコストについて懸念を示し、規則の報告要件を満たすにはもっと時間が必要だとする企業もあった。
調査対象となったほぼ全員(97%)の経営幹部が、SECの気候関連報告要件を満たすためにテクノロジーが重要な役割を果たすと予想している一方で、85%が適切なテクノロジーが整備されていないことを「やや」または「非常に」懸念していると答え、32%が、まだESG報告に役立つテクノロジーを利用していないと報告した。この傾向は中小企業で顕著であり、売上高50億ドル未満の企業の90%以上が準備に関する懸念を表明しているのに対し、大企業では65%にとどまっている。
また、多くの企業がSECの規則を満たすための人員配置に懸念を示しており、調査対象となった経営者の36%が、気候関連の報告要件を満たすための適切な人員配置に十分な自信を持っていなかった。技術的な懸念とは対照的に、中小企業は人員配置の準備が整っていると回答している。中小企業の70%が「非常に自信がある」と回答したのに対し、大企業では61%にとどまっている。
SECは、規則案への対応にかかる費用の概算を発表し、初年度の費用を64万ドル(約8,739万円)と予測している。しかし、調査対象となった経営者は、この水準を超える費用がかかると予想していた。61%の経営幹部が、自社ではコンプライアンス初年度に75万ドル(約1億円)以上の費用がかかると予想し、そのうち25%以上は100万ドル(約1.3億)を超えると述べていた。
要求される気候関連情報の報告を開始するスケジュールについて尋ねたところ、少なくとも70%が「2年が妥当である」と回答した。また、4分の1近くが、広告の環境主張を満たすための詳細な計画開示には、少なくとも3年は必要であると答えた。
リスク管理や気候関連報告書の要求事項を満たすために、保証の役割も大きく期待されていた。同要件がSECの最終規則に含まれるかどうかにかかわらず、回答者の96%が独立した保証を利用する予定である。