EY、企業の気候情報開示状況を分析した「Global Climate Risk Barometer」を発表

EY、企業の気候情報開示状況を分析した「Global Climate Risk Barometer」を発表

9月27日、EYは、企業の気候情報開示の状況を分析した年次報告書「Global Climate Risk Barometer」を発表した。本調査では、過去1年間に企業によるTCFDに沿った報告が大幅に増加した一方で、気候関連リスクの財務的影響に関する透明性は引き続き不十分であり、気候報告と脱炭素化に関する行動との間に断絶があることが明らかになった。

本報告書で提起された重要な問題は、気候関連開示のレベルの向上と、企業が重要な気候関連情報の透明性を提供する能力との間にある断絶であり、財務諸表で気候関連事項に言及している企業はわずか29%に留まっている。

本報告書において、EYは47カ国、13の気候リスクにさらされる金融・非金融セクターの1,500社以上の情報開示を分析した。また本報告書では、「カバレッジ」(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告に準拠した情報をある程度提供している度合い)、「クオリティ」(TCFD勧告11項目を満たしている度合い)などの開示の主要な側面について調査を実施した。

本調査によると、企業の気候関連情報開示は増加しており、TCFDの適用率は2021暦年で84%に達し、前年の70%から大幅に上昇した。TCFDに沿った報告の増加は、一部の法域における規制要求の高まりに対する企業の対応と、リスクの特定と軽減、投資家、従業員、顧客などのステークホルダーとの関わりを目的とした自主的な報告の増加の両方を反映している。

しかし、TCFDの対象範囲が広がる一方で、気候変動報告の質は比較的停滞しており、全体の平均質スコアは昨年の42%から44%となり、企業が直面する気候変動問題や気候関連リスクの財務的影響について十分な透明性を提供することに引き続き遅れがあることが示された。

本調査の結果を地域別に見ると、報告書の開示範囲と質は、気候変動報告義務化の実施国で最も高く、英国と日本がそれぞれの指標で上位2位を占めていることが明らかになった。両国は、最近TCFDに準拠した気候変動報告の要求事項を企業に導入した。

本調査では、最も気候変動にさらされているセクターが、優れた報告書を提供する傾向があることも明らかになった。エネルギーセクターは、品質(保険セクターと同数)、カバレッジの両方でトップとなった。これは、エネルギー企業が投資家から脱炭素戦略に関する透明性を高めるよう求められていることを受けたものである。

エネルギー部門は、脱炭素化戦略を開示している企業の割合でも81%と最も高いスコアを記録している。一方、農業・食品・森林セクターは、非金融セクターの中で脱炭素戦略開示の割合が最も低く、網羅性と質の両方で最も低い48%に留まった。

【参照ページ】
(原文)When will climate disclosures start to impact decarbonization?
(日本語訳)EY、企業の気候情報開示状況を分析した「Global Climate Risk Barometer」を発表

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