3月31日、金融庁は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正を発表し、同日に適用を開始した。金融庁は、令和4年12月19日から令和5年1月27日にかけて原案を発表し、パブリックコメントの募集を行っていた。
今回の改正は、ESGを掲げるファンドが国内外で増加しており、運用実態が見合っていないのではないかとの懸念を受けて行われた。監督指針に「ESG投信に関する留意事項」が追加され、ESG投信と認められるためには、ESGを投資対象選定の主要な要素とし、交付目論見書の「ファンドの目的・特色」にその旨を記載していることが必要となった。ESG投信に該当しない公募投資信託のうち、2023 年3月末までに設定されたものについて、「ESG」「SDGs」「グリーン」「脱炭素」「インパクト」「サステナブル」等のESG関連用語を使うことが禁止される。
また、投資戦略でのウォッシュを防ぐため、ESG投信の交付目論見書の「ファンドの目的・特色」に以下の事項を記載しているかチェックが行われる。
- ESGの総合評価又は環境や社会の特定課題等、投資対 象選定の主要な要素となるESGの具体的内容
- 主要な要素となるESGの運用プロセスにおける勘案方法
- 主要な要素となるESGを運用プロセスにおいて勘案する際の制約要因やリスク
- 持続可能な社会の構築に向けて、環境や社会のインパク ト創出を目的としているESG投信について、その目的、イ ンパクトの内容、及び目標とする指標・数値、方法論などイ ンパクトの評価・達成方法
- 投資信託委託会社として、ESGを主要な要素とする投 資戦略に関連する個別の公募投資信託固有の方針又は全社的なスチュワードシップ方針がある場合には、当該方針の内容
- 上記の点について、更に詳細をウェブサイト等で開示する場合には、その参照先
定期開示では、ESG投信の交付運用報告書に以下の事項を継続的に記載することが必要とされる。
- 純資産額のうち、ESGを主要な要素として選定した投 資対象への投資額(時価ベース)の比率について、目標や目安を設定している場合には、実際の投資比率
- 投資対象の選定において主要な要素となるESGのポー トフォリオ全体の評価指標の達成状況について、目標や目安 を設定している場合には、その達成状況
- 持続可能な社会の構築に向けて、環境や社会のインパクト創出を目的としているESG投信について、インパクトの達成状況
- 投資信託委託会社として、ESGを主要な要素とする投 資戦略に関連するスチュワードシップ方針がある場合、当該 方針に沿って実施した行動
- 上記の事項について、更に詳細をウェブサイト等で開示する場合には、その参照先
ESG公募投信の運用会社には、組織体制の状況もチェックされる。さらに、ESG投信の運用を外部委託する場合には、外部委託先での組織体制に関するデューデリジェンス体制の整備状況がチェックされる。
【参照ページ】
ESG投信に関する「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について