価格転嫁の適正化へ向けた法改正が成立 下請取引の公正化と物流対応も強化

5月16日、参議院本会議にて、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が改正された。政府は3月11日に、発注者・受注者間の対等な関係に基づく価格転嫁と取引の適正化を図るため、改正案を提出していた。これにより、急激に高騰する労務費や原材料費、エネルギーコストといった負担をサプライチェーン全体で適切に転嫁する「構造的な価格転嫁」の実現が期待される。

今回の法改正では、発注者が協議を行わずに代金額を一方的に決定する行為を禁止。価格据え置きの強要を防ぐ。また、手形支払の禁止や、ファクタリングなど支払期日前に代金相当額を得ることが困難な手段も制限される。さらに、物流業界の課題に対応するため、製品の引渡しに必要な運送委託を対象取引に追加した。

加えて、規制対象の拡充として、従業員数300人(役務提供等は100人)未満の事業者が新たに保護対象となる。関係省庁による情報共有や連携によって、違反事例への面的執行も強化される。

振興措置に関しては、サプライチェーン上の複数事業者による共同振興計画への支援が可能となる。また、従業員数の大小に基づく法人間の取引も振興対象に加えられた。地方公共団体との連携強化や、主務大臣による改善指導権限の明確化も盛り込まれ、地域企業の持続可能な発展を支援する体制が整えられる。

併せて、「下請事業者」や「親事業者」などの用語を、「中小受託事業者」「委託事業者」へと改め、より実態に即した表現に変更された。これに伴い、法律名も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」などへと改称される。

(原文)(令和7年5月16日)「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-28

    ネイチャーポジティブ経営の重要性が増大・企業に求められる対応とは?(再掲)

    ※2024年3月5日公開済みの記事に「移行計画」「ネイチャーポジティブ宣言」に関する情報を一部更新…
  2. TCFD×TNFD統合開示ガイド:いま企業が備えるべき実務対応とは?

    2025-8-20

    TCFD×TNFD統合開示ガイド:いま企業が備えるべき実務対応とは?(再掲)

    ※2025年5月28日公開済みの記事を一部更新し再掲している。 企業のサステナビリティ関連の…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-4

    ネットゼロ・バンキング・アライアンス、新たな枠組みへ移行検討―会員投票を開始

    8月27日、世界の銀行業界における気候変動対応を主導してきた「ネットゼロ・バンキング・アライアンス…
  2. 2025-9-3

    ESG資産の成長継続へ、AIとエネルギー転換が次の焦点―にBBG調査

    8月25日、ブルームバーグ・インテリジェンスは2025年春に実施したESG投資家調査を発表した。約…
  3. 国内外のサステナビリティ開示動向(2024年度)ーGPIFサステナビリティ投資報告書が示す課題とは-

    2025-9-3

    国内外のサステナビリティ開示動向(2024年度)ーGPIFサステナビリティ投資報告書が示す課題とは-

    8月29日、GPIFが2024年度サステナビリティ投資報告書を公表した。本報告書では、気候関連開示…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る