1月20日、フランス政府は、欧州連合(EU)の企業競争力を向上させるため、規制および行政手続きの簡素化に関する包括的な提案を発表した。本提案は、現在のEUの規制の複雑さが企業に10%のGDP損失をもたらしているという分析に基づいている。
フランス政府は、企業規模に関する新しいカテゴリとして「中規模企業(ETI)」を設けることを提案した。中小企業(SME)のみに適用されている行政負担の軽減措置をETIにも適用することで、企業の成長を促し競争力を強化する狙いがある。このカテゴリは従業員数250~1500人、売上高最大15億ユーロまたは総資産20億ユーロ未満の企業が対象となる。
企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の見直しも提案の一つである。2024年6月に制定された同規制は、企業がサプライチェーン全体において環境・人権リスクを管理することを義務付けるものだが、フランス政府はこれが企業の競争力を損なう可能性があると指摘する。具体的には、規制の施行延期や、企業規模に応じた適用基準の見直しを求めている。報告指標の削減や、中規模企業向けの簡素化された報告基準の導入が求められている。さらに、監査費用の透明化によって企業の負担を軽減し、より実効的な報告体制を整えるべきだとしている。
また、本提案では、スタートアップの成長を促進するために、EU全体での統一規制「EUスタートアップ&スケールアップ戦略」の導入も提案された。企業登録の一元化や、投資・資金調達基準の統一が含まれている。人工知能(AI)規制についても、フランス政府は実施指針の明確化と規制負担の軽減を求めている。AIリスク分類の再評価や、AIモデル開発者向けのベストプラクティスガイドの策定が必要である。
フランス政府の提案は、EU全体の規制環境をよりシンプルかつ柔軟にすることを目的としている。特に、中小企業の競争力向上、環境報告義務の軽減、金融業界の規制負担の削減が重要な改革として挙げられる。これらの提案がEUレベルでどのように受け入れられるかは今後の政治的交渉に依存するが、企業の成長と競争力向上に向けた一歩となる可能性が高い。
【参照ページ】
(原文)Note des autorites franciases, 20 janvier 2025
(日本語参考訳)フランス当局からの通達、2025年1月20日