EU炭素国境措置、簡素化で合意 中小企業の9割が対象外に

6月13日、欧州議会とEU理事会は、域外からの輸入品に事実上の炭素税を課す「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」の規則を簡素化することで政治合意に達した。年間輸入量が50トン未満の事業者を対象外とする新たな「デミニミス(僅少)基準」を導入し、中小企業を中心とする輸入業者の管理負担を大幅に軽減する。

この変更により、輸入業者の約9割がCBAMの適用除外となる見通し。一方で、対象となる鉄鋼、アルミニウム、セメントなどの輸入品がもたらすCO2排出量全体の99%は引き続き捕捉されるため、制度の気候変動対策としての実効性は維持される。

今回の合意は、EUが進める既存法の簡素化パッケージ(「オムニバス法案」)の一環。これまではごく少額の貨物を対象外としていたが、今後は重量を基準とすることで、少量のみを輸入する中小企業や個人の負担を軽減する。制度の抜け穴を防ぐための安全策も盛り込まれた。

このほか、CBAM対象輸入品の承認プロセス、排出量の算定・検証ルール、公認申告者の金銭的責任に関する手続きなども簡素化される。

合意後、報告者を務めたアントニオ・デカロ欧州議会議員は「我々は企業からの簡素化を求める声に応え、90%の輸入業者を対象外とすることで事業の競争力と成長を促進する。同時に、排出量の99%をカバーすることでEUの環境目標は維持される」と声明を発表した。

CBAMは、EU域内の排出量取引制度(ETS)による炭素価格と、輸入品に課せられる炭素コストの差を調整し、「カーボンリーケージ(炭素漏出)」を防ぐための措置。今回の合意は今後、欧州議会と理事会での最終承認を経て正式に発効する。

(原文)CBAM: Deal with Council to simplify EU carbon leakage instrument
(日本語参考訳)CBAM:EUの炭素リーケージ対策を簡素化するため理事会と合意

関連記事

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2025-6-26

    EU炭素国境措置、簡素化で合意 中小企業の9割が対象外に

    6月13日、欧州議会とEU理事会は、域外からの輸入品に事実上の炭素税を課す「炭素国境調整メカニズム…
  2. 2025-6-25

    IFRS財団、ISSB基準の実務導入を支援する新eラーニングモジュールを公開

    6月13日、IFRS財団は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定した基準の理解と導入を…
  3. 2025-6-25

    バーゼル委員会、銀行の気候リスク開示・自主的枠組みを公表

    6月13日、世界の主要な銀行規制当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会は、銀行が抱える気候関連の金…

““登録02へのリンク"

ページ上部へ戻る