環境NGO、日本の損保大手3社の東南アジア石炭火力への巨額保険引受を調査・発表

6月9日、環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Future」と、韓国の環境NGOである「Solutions for Our Climate (SFOC) 」は、石炭事業を引き受けている保険会社を特定し、その結果をまとめた報告書「Exposed: The Coal Insurers of Last Resort」を発表した。報告書では、海外の保険会社が石炭事業から続々と撤退する中、日本の保険会社が最後の引受者になっている実態が明らかとなった。 個別事業における保険引受状況が公開されることは極めて異例である。

報告書によると、日本の大手損害保険会社であるMS&AD、東京海上、SOMPOの3社が、ベトナムのブンアン2など、事例調査した石炭火力発電事業のうち4事業に対し、巨額の保険引受を行っている。特にブンアン2については、MS&ADが12億1,600万米ドル(約1,600億円)、東京海上が5億6,900万米ドル(約770億円)、SOMPOが2億3,800万米ドル(約320億円)の保険金規模で保険引受を行っており、3社の引受額の総額は全体引受額の約46%を占めている。

また、報告書は、2018年に保険契約が締結されたギソン2と2021年のブンアン2を引き受けた保険会社の顔ぶれ等を比較しており、ここ数年の間に保険会社の間で脱石炭方針が浸透した結果、石炭火力発電事業の保険会社の顔ぶれが変わったと指摘している。今後、既存石炭事業への保険を確保する難しさも示唆している。

MS&AD、東京海上、SOMPOの3社は、石炭火力発電事業の新規保険引受および投融資の停止を表明しているものの、炭火力事業の既存の保険契約に関するフェーズアウト目標や、石油・ガス事業についての包括的な引受停止方針もない。1.5℃目標との整合性をとるために、これらの方針を早急に掲げることが求められる。

【参照ページ】MS&AD・東京海上・SOMPOによるベトナム・ブンアン2石炭火力等への巨額保険引受が判明

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る