欧州中央銀行(ECB)が欧州の銀行セクターの気候・環境(C&E)リスクの管理について包括的なレビューを行ったところ、期待に応えている銀行はなく、多くの銀行が十分な改善計画を持っていないことから、準備が大幅に不足していることが明らかになった。
この報告書は、昨年ECBが発表した「C&Eリスクに関するガイド」に続くもので、C&Eリスクをビジネスモデルや戦略、ガバナンス、リスク選好に組み込むことに関して、
銀行に期待される一連の事項を示している。今回の評価には、CE&Eリスクを管理・開示するための銀行の準備状況に関するベンチマーキングのフォローアップ結果が含まれている。評価の対象となったのは、ECBの監督下にある112の銀行で、総資産は24兆ユーロに上る。
今回のレビューで明らかになった重要な点の一つは、気候変動リスクや環境リスクへのエクスポージャーの認識が銀行によって異なることだった。レビューを受けた銀行の半数は、今後5年間にC&Eリスクによる重要なリスクプロファイルの影響を予想している一方で、報告書では、C&Eリスクにさらされていないと答えたすべての銀行が、リスク評価に大きな不足を抱えていることがわかった。
評価の結果、銀行は経営組織、リスク選好、オペレーショナル・リスク管理などの分野でECBの期待に沿った取り組みを概ね行っていることが示されたが、期待に近い水準にある銀行はなく、特に内部報告、市場・流動性リスク管理、ストレステストについては多くの銀行が遅れている。ECBの調査によると、半数の銀行が気候変動や環境リスクを事業戦略に組み込むための実質的な計画を持っておらず、80%以上の銀行がモニタリングのための主要なリスク指標を策定していない。
これまでに意味のある進展が見られた数少ない分野の一つが、信用リスク管理への気候変動リスクの統合であり、いくつかの銀行では、デューデリジェンスの手順を強化したり、気候変動リスクの高い活動への融資を制限する措置を実施している。
今回の評価を受けて、ECBは、2022年前半に、戦略、ガバナンス、リスク管理へのC&Eリスクの取り込みを含む、銀行の気候・環境リスク管理への準備状況の全面的な見直しを行うとしている。
また、ECBは、2022年の第1四半期に、銀行の気候変動・環境リスクの開示に関する調査結果を発表する予定だ。
【参照ページ】ECB Says Every Bank Reviewed Falls Short on Managing Climate and Environmental Risk