COP26における最終合意 – グラスゴー気候条約の締結

11月13日、COP26において最終的な合意がなされ、新たに「グラスゴー気候条約」が締結された。この協定では、COPの決定事項としては初めて化石燃料への言及が含まれているが、閉幕間近の数日間でその表現は大幅に緩和される結果となった。また、各国の暫定的な気候目標を近い将来に修正・強化することや、途上国への気候金融を強化することなどが盛り込まれている。

合意内容のハイライトは以下の通りである。

化石燃料について今回の合意では、COPの枠組みの中で初めて化石燃料の使用量削減の必要性に言及がなされたが、その表現は多くの人が期待していたものよりも弱いものであった。この協定の最終文書では、締約国に対し、衰えない石炭の使用と非効率的な化石燃料への補助金を「段階的に削減」する努力を加速することを求めていたが、インドと中国の反対により、最後の最後で「段階的に削減」という言葉が削除され、当初の文書草案にあった「石炭と化石燃料への補助金の削減を加速する」という呼びかけは大幅に弱められた。


続いて、気候変動資金に関して2015年のパリ協定では、先進国は2020年までに年間1,000億ドル(約11兆円)以上の気候変動資金を提供することで、途上国への支援を強化することが求められていた。今回の文書では、2020年の目標が達成できなかったことを「深く遺憾に思う」としながらも、COP26で気候変動資金の誓約が大きく前進したことに言及し、2025年まで毎年1,000億ドルの目標を完全に達成することを求め、進捗状況の透明性の必要性を強調している。また各国は、途上国への適応のための気候変動対策資金の提供を、少なくとも2倍の年間400億ドル(約4.5兆円)にするよう求められている。


気候目標についてはこの2年間で、ネット・ゼロ・エミッションの達成を誓う国が飛躍的に増え、現在では世界の排出量の80%がこの長期目標の対象となっている。しかし、現在の政策や短期的な目標は、気温の上昇を抑制するというパリ協定の目標とは一致していないことが、多くの調査で明らかになっている。この協定では、各国が今後1年間で2030年の排出量目標、即ち各国がパリ協定の下で提出した国が決定する貢献(NDC)を再検討し、強化することを求めている。


そして、炭素市場については、パリ協定の第6条のキックオフから6年を経て、COP26で炭素市場のルールブックが制定され、一貫性と透明性のあるフレームワークが出来上がり、巨大な新興市場である炭素クレジット市場の発展に大きな一歩を踏み出したといえる。

【参照ページ】
Glasgow Climate Pact

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