
2月27日、スタンダードチャータード銀行(以下、スタンダードチャータード)は2025年2月27日、トランジション・プランを公表し、事業全体や自社オペレーションにおける意思決定に気候変動対策を組み込みつつ、ネットゼロ目標を達成する方針を明らかにした。このプランにより、同行は2050年までに融資ポートフォリオ(Scope 3)の排出量をネットゼロとし、自社事業運営(Scope 1およびScope 2)については2025年までに排出量ゼロを目指す。
プランの概要では、新規顧客(NTB)・既存顧客(ETB)を問わず、企業・機関投資家に対してサステナブル・ファイナンスやトランジション・ファイナンスを提供するための具体的な枠組みを示した。金融業界の中でも特に高排出セクターとなりうる顧客の排出削減支援を、イノベーションや成長機会につなげることを目指している。
今回のプランは、国際的な気候金融の取り組みである「グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネット・ゼロ(GFANZ)」や「トランジション・プラン・タスクフォース(TPT)」のガイドラインを踏まえて作成された。同行では、ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)のガイドラインに示された12の主要排出セクターに対して、すでに2030年までの中間目標を策定済みである。また、排出量の測定やターゲット設定がパリ協定に整合しているかについては、EYによる外部確認を受けた。これによりスタンダードチャータードは、「グローバル・システミカル・インポータント・バンク(GSIB)」として初めて、第三者検証を伴う科学的根拠に基づく削減目標を示した形となる。
加えて、同行の2024年度通期業績報告によれば、2025年までに年間10億ドルのサステナブル・ファイナンス収益を目標としており、2021年1月から2024年9月までに累計1,210億ドル相当のサステナブル・ファイナンスを動員した。石油・ガス向けには2030年までに29%の絶対排出量削減を求める目標を設定し(2020年比)、高排出セクターに対しては合計12の科学的根拠に基づくターゲットを定めている。
同プランは、ネットゼロ計算や目標管理、クライアントとの協議や意思決定プロセスなどに関するガバナンス体制と統制方法も詳述しており、徹底した監視・説明責任とネットゼロ目標との整合性を追求する仕組みを整えている。
スタンダードチャータードのビジネスモデルは、国境を超えた金融サービスとウェルスマネジメントの強みを組み合わせたもので、サステナビリティ関連の事業はあらゆるセグメントでの顧客提供の一部として位置づけられている。同社は「2025年までに自社排出量をゼロ、2050年までに融資ポートフォリオをネットゼロ」というゴールに向け、今後も積極的なサステナブル・ファイナンスの拡大と排出削減に取り組む考えである。
【参照ページ】
(原文)Standard Chartered publishes Transition Plan
(日本語参考訳)スタンダード・チャータードが移行計画を発表