EU議会、繊維製品リサイクルを生産者に義務付ける規則を採択。ファストファッション対象

3月13日、欧州議会は、514対20の賛成多数で、繊維・食品部門からの廃棄物削減を目的とした一連の提案を採択した。本提案には、ファッションブランドや繊維メーカーに対し、衣料品や履物の回収・リサイクル費用の負担を義務付けることや、EU加盟国に対する拘束力のある食品廃棄物削減目標の設定などが含まれる。

今回の採決は、欧州委員会が2023年7月に発表した廃棄物枠組の改定案に対する欧州議会の見解が採択されたことを記念するもの。同委員会は、重大な負の環境外部性を引き起こしている資源多消費部門の上位2部門である、繊維部門と食品部門の環境および気候への影響を削減することを目的としている。

欧州委員会によると、EUでは年間1,260万トンの繊維廃棄物(そのうち520万トンが衣料品と履物)が発生しているが、消費者使用後の繊維廃棄物のうち、再利用やリサイクルのために分別回収されているのはわずか22%に過ぎず、残りは埋め立てや焼却処分されることが多い。さらに、EUでは毎年5,900万トン近くの食品が廃棄されており、その市場価値は1,320億ユーロ(約20兆円)に上ると推定されている。

欧州委員会は提案の中で、ファストファッションが繊維廃棄物の発生に与える影響を指摘した。ファストファッションは、環境外部性をコストに内包しない低価格の製品を市場に出し、衣料品の大量購入を促している。欧州議会で採択された新規則案は、包装、バッテリー、電気・電子機器からの廃棄物を管理するために使用されている生産者責任(EPR)制度を、繊維製品にも拡大するもので、生産者は繊維製品を個別に回収、分別、リサイクルするための費用を負担することを義務付けられる。新しい要求事項の対象となる製品には、衣類やアクセサリー、毛布、ベッドリネン、カーテン、帽子、履物、マットレス、カーペットなどが含まれ、皮革、合成皮革、ゴム、プラスチックなどの繊維関連素材を含む製品も含まれる。

欧州議会で採択された文書は、欧州委員会が提示した食品廃棄物に関する提案も強化する。加盟国に対し、食品加工および製造業では少なくとも20%、小売業、レストラン、外食産業および一般家庭においては一人当たり40%の廃棄物削減目標を2030年までに実施するよう求めるものである。欧州議会はまた、欧州委員会に対し、2035年までにそれぞれ30%と50%の目標を導入することを評価するよう要請した。

【参照ページ】
(原文)MEPs call for tougher EU rules to reduce textiles and food waste
(日本語参考訳)EU議会、繊維製品リサイクルを生産者に義務付ける規則を採択。ファストファッション対象

関連記事

“ホワイトペーパーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-7-23

    シェルパ、東洋経済新報社とシステム連携契約を締結

    7月23日、シェルパ・アンド・カンパニー株式会社が開発・提供する企業向けESG情報開示支援クラウド…
  2. 2024-7-17

    GRI、新たにCSRD/ESRS開示のためのサポートサービスをリリース

    7月10日、GRI(Global Reporting Initiative)は、新しいGRI-ES…
  3. 2024-7-17

    JCI、1.5℃目標に整合する2035年目標を政府に求める。216団体が賛同

    7月8日、気候変動イニシアティブ(JCI)は、「1.5度目標と整合する野心的な2035年目標を日本…
ページ上部へ戻る