1月30日、欧州中央銀行(ECB)は、気候変動に関する業務を拡大することを決定し、今後2年間の同分野における行動のロードマップをまとめた新たな「気候・自然計画2024-2025」を発表した。
ECBによると、新たな取り組みは、気候危機が経済と金融システムに与える影響が増大する中で、中央銀行がグリーン転換の影響とリスク、気候変動による物理的リスクの増大、自然の損失と劣化に起因するリスクなどの主要分野に焦点を当てることを目的としている。
今回の発表は、2022年にECBが「気候変動への取り組みの強化」を監督上の最優先事項のひとつとすることを決定したことを受けたもの。銀行の気候変動リスクに関する深堀りの実施、銀行の気候変動リスク開示要件への準拠状況のレビュー、銀行の気候・環境戦略やリスクに関連する風評リスクや訴訟リスクの調査などが予定されている。ECBは、金融政策や銀行監督を含むECBの継続的な業務において、気候変動に関連する現在の行動を補完するものであるとしている。
ECBの新たなロードマップは、新たな重点分野ごとに計画されている主要な措置と行動の概要を示している。「グリーン経済への移行の舵取り」では、移行資金が金融政策メカニズムに及ぼす影響の評価、グリーン投資のニーズの評価、移行から生じる構造的影響の分析、気候の側面に焦点を当てたマクロ経済モデリングの枠組みの推進などが計画されている。
気候変動の物理的影響に対処する作業において、ECBは、気候シナリオやマクロ経済予測に使用する枠組みへの気候変動の影響の統合を進め、物理的リスク分析を支援するデータの利用可能性を改善し、気候への適応が経済や金融部門に及ぼす影響(保険保護ギャップや投資ニーズを含む)を探る。ECBはまた、気候変動と自然劣化や生物多様性の損失との関連、および関連する経済的・財政的影響についても分析する。
ECBはさらに、中央銀行自身の業務において、2030年の炭素削減目標を支援するため、最新の環境管理プログラムを立ち上げるとし、ユーロ紙幣のエコデザイン原則に取り組み、デジタルユーロの設計に環境フットプリントへの配慮を盛り込むなどの計画を説明した。
【参照ページ】
(原文)ECB steps up climate work with focus on green transition, climate and nature-related risks
(日本語参考訳)欧州中央銀行、気候変動リスクとグリーン・トランジションへの注視強化を発表