12月14日、EUの上院であるEU理事会と下院である欧州議会は、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)案において政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きが進むこととなる。この指令は、EUおよびEU域内での事業規模の大きい大企業に対し、人権と環境に及ぼす実際もしくは潜在的な悪影響に関するデューデリジェンスの実施を義務化するものである。
対象となる企業は、従業員500人以上かつグローバル売上が1.5億ユーロ(約233億円)を超える大企業と、特定セクターに関しては従業員250人以上かつグローバル売上が4,000万ユーロ(約62億円)を超える企業である。指令発効から3年後には、EU域内で売上が1.5億ユーロ(約233億円)を超えるEU域外の大企業と、EU域内での売上が4,000万ユーロを超える特定セクターのEU域外企業にも適用される。
デューデリジェンスの実施内容には、以下が含まれる。
- デューデリジェンスを自社の方針に組み込む。
- 人権と環境への悪影響を特定、評価し、必要に応じて優先順位をつける。
- 悪影響を予防または緩和し、実際に生じている悪影響を終息、最小化、是正する。
- 通報メカニズムと苦情処理手順を確立、運営する。
- デューデリジェンス方針と対策の有効性をモニタリングする。
- デューデリジェンスについて公表する。
環境に関しては、気候変動に対する移行計画(トランジション・プラン)の作成が含まれる。人権に関しては、ILO中核的10条約や国際人権A規約、国際人権B規約、児童の権利条約などが採用される。
指令に違反した場合、企業にはグローバル売上の5%以上の罰金が科される。また、影響を受ける人々が5年間にわたり損害賠償請求権を行使できるようにするなど、民事責任の強化も行われる。中小企業は義務対象外ですが、サプライチェーンを通じて影響を受ける可能性があり、中小企業支援策も検討されている。
【参照ページ】
(原文)Commission welcomes political agreement on rules enforcing human rights and environmental sustainability in global supply chains
(日本語参考訳)欧州委員会、グローバル・サプライチェーンにおける人権と環境の持続可能性を確保するための規則に関する政治合意を歓迎