WRI、 消費者の水使用に関する目標設定でP&Gと協力

10月20日、国際資源研究所(WRI)は、下流サプライチェーンでの水資源目標に関してP&Gの事例を発表した。目標設定手法の開発にはWRIも協力している。

水に関する目標設定は、企業のサステナビリティにおいて増加傾向にあるが、業務上および上流での水目標は、バリューチェーンの生産段階における水のリスクと影響に対処するものでしかないと指摘。石鹸、シャンプー、歯磨き粉、洗濯用洗剤、食器用洗剤、その他の消費財製品は、製造時に多くの水を必要とするが、消費者が使用する際にはさらに多くの水を必要とすることが多い。P&Gのバリューチェーン全体における取水量の96%は、消費者が製品を使用する際に下流で発生し、原材料生産は3%、直接事業は1%にとどまる。

世界の水需要を満たすためには、2030年までに、現在利用可能な供給量を56%上回る水、つまり需要の56%削減が必要となる見通し。これを受けWRIは、水問題への対処には、川下での水使用目標が不可欠であるとした。

水ストレスの増大は、企業の収益にとっても問題であると言及。2016年、ユニリーバはCDPに対し、ブラジルの2015年の干ばつによりサンパウロの消費者がシャワーや洗濯の頻度を減らしたと報告。この行動変化により、パーソナルケア製品やホームケア製品の売上が減少している。2017年の世界銀行の報告書では、企業にもよるが、断水は8.7%から34.8%の売上減少につながると推定している。

今回、川下における水使用量の目標を設定している企業モデルとして、P&Gの事例を紹介した。P&GはWRIと協力して、消費者の水使用に対応する定量的な水再生目標を設定した。P&Gは、メキシコシティを囲むモクテスマ流域と、米国ロサンゼルス市の大部分を含むカレグアス流域の2つの優先流域において、2030年までに自社製品の使用で消費される水の110%を回復させることを目指している。P&Gが事業を展開する水ストレスの高い18の流域で、製品使用時に消費される総水量の50%以上に相当する。

P&GとWRIが開発した目標設定手法では、消費者の水使用による影響をモデル化し、同社の市場・出荷データ、消費者習慣に関する調査、公表文献を組み合わせ、14の製品カテゴリーにおけるP&Gの消費者の水使用量を推定。蒸発水や屋内漏水による損失水も考慮した。

目標設定の対象とする流域では、同社の製造ポートフォリオと主要消費者市場を、WRIの水リスク分析ツール「Aqueduct」と照らし合わせて優先順位を決定した。さらに、WRIはP&Gのためにリスクアセスメントを実施し、主要施設と消費者市場が慢性的に高い水ストレスにさらされている流域をマッピングした。7カ国にまたがる18の優先流域が特定され、最終的に18流域の総水量の半分以上を占める2つの流域を目標設定対象として選定した。

【参照ページ】
(原文)The Next Phase of Corporate Sustainability: Addressing Consumer Water Use
(日本語参考訳)WRI、 消費者の水使用に関する目標設定でP&Gと協力

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