10月、気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)が公表した2023年現状報告書によると、気候変動に関連するリスクや機会に関する企業の情報開示は、数年前よりも大幅に増加している。
気候関連報告の進捗を監視する責任は、IFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に移管され、ISSBは最近、持続可能性と気候に関する報告のグローバル基準を公表した。
TCFDは、投資家やその他の利害関係者が企業の気候関連財務リスクを評価できるようにするため、企業の一貫した開示基準を策定することを目的として、2015年に金融安定理事会によって設立された。勧告は2017年6月に公表され、現在に至るまで、事実上、気候関連情報開示の業界標準として機能している。TCFDの勧告は、ISSBの気候関連 開示基準の要求事項に幅広く取り入れられてい る。
TCFDは、新たな現状報告書のために、3年間にわたり、幅広い地域とセクターにわたる1,350社以上の大企業の公表済み報告書を対象に、人工知能技術を用いた調査を実施した。
その結果、TCFDの勧告に沿った情報開示を行っている企業の数が大幅に増加するとともに、企業が遵守している勧告の数も増加していることがわかった。報告書によると、2022年には90%の企業がTCFDの11の勧告のうち少なくとも1つに沿った開示を行ったが、2021年には80%、2020年には64%に過ぎなかった。また、少なくとも5つの勧告について報告している企業は58%に上り、昨年の40%、2020年には18%に過ぎなかった。1社あたりの平均開示件数は、2020年の3.2件から66%増加し、2022年には5.3件に達した。
過去2年間で、11の推奨事項のそれぞれで報告件数が増加しているが、最も報告件数が増加したカテゴリーは、「気候関連のリスクと機会」で、2022年には62%の企業が開示しており、2020年の36%から急増している。次いで、取締役会の監督に関する報告で、2020年の39%から64%に増加、気候関連の目標は、2020年の42%から2022年には66%の企業が報告している。
本調査によると、3年ごとに最も報告が少なかったカテゴリーは、異なる気候関連シナリオの下での企業の戦略で、2022年にこの提言に関する開示を行った企業はわずか11%であった。報告書によると、90%の企業が、この推奨される情報開示を実施するのは「やや困難」または「非常に困難」と評価している。
報告書はまた、セクター、地域、規模など、企業の次元を超えた情報開示についても調査している。エネルギー業界と素材・建築業界では、1社あたりの平均開示件数がそれぞれ6.3件と5.8件と最も多く、テクノロジー・メディア業界の平均開示件数は3.7件と最も少なかった。欧州の企業の平均開示件数は7.2件と最も多く、中東・アフリカの企業は3.8件と最も少なかった。大企業(時価総額123億ドル以上)の報告率は中小企業よりはるかに高く、1社あたり6.7件であったのに対し、時価総額32億ドル未満の企業は3.9件であった。
報告書はまた、運用資産に基づく資産運用会社上位50社と資産所有会社上位50社の公開報告書を検証し、資産運用会社の70%と資産所有会社の30%がTCFD勧告のうち少なくとも5項目に沿った報告をしていることを示した。調査結果によると、アセットマネージャー とアセットオーナーは、投資先企業からの情 報が不十分であることを、気候関連報告 の最大の課題としている。
TCFDは、調査結果を「勇気づけられる」 ものとしながらも、「気候変動が企業に与える実際 の影響と潜在的な影響に関する透明性を向上させるためには、さらなる進展が必要である」とし、「より多くの企業が、財務諸表における気候関連問題の影響を検討する必要がある」と付け加えた。報告書は、2022年にTCFDが推奨する11の開示事項全てに沿った報告をしてい る企業はわずか4%であり、TCFDに沿った気候変動開示は、財務報告書よりもサステナビリティ報告書やアニュアルレポートで開示される可能性が4倍高いことを指摘している。