アリアンツ等、ネット・ゼロにおけるクライメートテックの重要性を強調

9月25日、アリアンツ経済研究所、保険世界大手独アリアンツのデジタル投資部門アリアンツX、ミュンヘン工科大学の起業支援機関UnternehmerTUM、独ベンチャーキャピタルUVCパートナーズは、ネット・ゼロへの世界的移行におけるクライメートテックの重要性に関する報告書を発表した。

クライメートテック産業は爆発的な成長を遂げ、2030年には年間売上高が6,000億ユーロ(約95兆円)に達すると予測されているが、欧州大陸は米国や中国に後れを取っている。同報告書によれば、欧州のエネルギー分野だけでも、年間2,000億ユーロ(約30兆円)の投資ギャップがあるという。本報告書では、欧州のクライメートテック産業を強化するための政策提言として、資金調達のためのEU共通プラットフォームの構築、民間セクターと研究機関の連携強化、機関投資家の誘致、官僚的ハードルの低減、気候技術ソリューションの調達義務化などを挙げた。

国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに世界全体で年間4.5兆ドル(約670兆円)のクリーンエネルギー投資が必要だと見積もっている。EUだけでも、2021年から2030年の間に年間1兆5,000億ユーロ(約230兆円)が必要であり、これは現在の水準よりも年間7,000億ユーロ(約100兆円)多い。調査によると、このうち5,600億ユーロ(約88兆円)は民間部門から、1,400億ユーロ(約23兆円)は公共部門から調達する必要がある。

クライメート・イノベーションの重要性についても明言している。成熟した技術だけでは、必要なCO2排出削減量の25%しか貢献できず、排出削減の75%以上は、新興技術によるものでなければならないとした。2020年から2040年の間に、革新的技術への年間平均3.3兆ドル(約500兆円)の投資が必要という。

市場に関しては、クライメートテック分野のベンチャーキャピタル(VC)とプライベートエクイティ(PE)への投資が増加していると分析。クライメートテックおよびクリーンテック企業への世界のVCおよびPE投資は、2019年の433億ドル(約6.5兆円)から2022年には973億ドル(約14.5兆円)に増加している。欧州企業は2022年にこれらの資金の約30%を確保しており、成長の可能性が有望視されている一方で、資金調達のミスマッチがあり、排出量の多いセクターは他のセクターよりも資金調達が少ないとした。

政策提言として、資金調達の合理化、資金調達アクセスのためのEU共通のプラットフォームの構築、ブレンデッド・ファイナンスによる長期資金の支援、クライメートテック・ソリューションの調達の義務化などを挙げた。その他の提言としては、機関投資家の誘致、資本市場環境の改善、民間セクターと研究機関の協力関係の強化、官僚的ハードルの軽減等。

【参照ページ】
(原文)ClimateTech is the missing piece in the net zero puzzle
(日本語参考訳)アリアンツ等4者、ネット・ゼロにおけるクライメートテックの重要性を強調

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