4月21日、欧州中央銀行(ECB)は、EUの銀行の気候・環境リスクに関する情報開示の実施状況についてのレビューを発表した。
本レビューは、ECBの直接監督下にある103の銀行と、各国当局によって監督されているその他の28機関を対象としている。ECBが昨年行ったレビューと比較して、銀行は気候・環境リスクの開示を大幅に改善しており、昨年は36%に過ぎなかったが、現在は86%の銀行がこれらのリスクに対する重要なエクスポージャーを開示している。同様に、ほぼすべての銀行が、取締役会による気候・環境リスクの監督について報告しており、前回の審査では約70%であったのに対し、現在は86%となっている。
銀行の気候変動フットプリントの大部分を占めるスコープ3の資金調達による排出量に関する報告も、昨年の15%から50%に改善された。しかし、ほとんどの銀行のスコープ3の開示はまだ十分ではなく、完全で具体的かつ実証的な情報を提供しているのは16%に過ぎない。
改善されたとはいえ、ECBは、大半の銀行がまだ報告義務を完全に果たしていないことを明らかにし、レビューの全カテゴリーにわたって「おおむね適切な」開示を提供していると評価された銀行はわずか6%であった。
本調査は、今年発効するESGリスク第3の柱に関する欧州銀行当局の実施技術基準(ITS)に基づくサステナビリティ関連の報告要件への準拠を銀行が近いうちに迫られる中で行われた。ITSには、気候関連の移行リスクや物理リスク、気候変動事象に対する資産エクスポージャー、EUタクソノミに沿った融資活動の割合、スコープ3の側面などに関する定量・定性情報の開示要件がある。一部の銀行は、早ければ2023年6月にも新規則に基づく最初の開示を行うことが求められる予定である。
ECBは、レビューの結果をまとめた声明の中で、銀行に対して「欠点に対処し、差し迫ったEBA報告基準を満たすための準備方法に関する計画を提供するよう」要請を送ったと述べた。新基準への不遵守はEU法違反となり、監督上の措置を誘発すると銀行に警告したことを明らかにした。
【参照ページ】
(原文)Banks must continue improving climate risk disclosures as new EU rules take effect, ECB report shows
(日本語参考訳)ECB調査:銀行、今年施行される気候変動情報開示規則への準備が整っていない