次世代地熱発電でメタとXGSが提携、AI電力需要に対応

6月12日、地熱発電技術を開発するスタートアップ企業XGS Energy(XGSエナジー)と、米IT大手メタ(旧フェイスブック)は、ニューメキシコ州で150MW規模の次世代地熱発電プロジェクトを共同で開発することで合意したと発表した。メタのデータセンターに電力を供給し、人工知能(AI)の発展に伴い急増する電力需要を、24時間365日稼働可能なクリーンエネルギーで賄うことを目指す。

このプロジェクトでは、XGSエナジーが独自に開発した、運転に水を一切使用しない地熱発電技術が活用される。従来の地熱発電は、豊富な水資源や透水性の高い地層など、特定の地質条件を持つ場所に限定されていたが、同社の技術は高温の岩盤さえあれば発電が可能なため、これまで未開発だった乾燥地帯などでの地熱開発に道を開く。

ニューメキシコ州は、高温岩盤の資源量で全米有数ながら、現在稼働中の地熱発電所は1カ所のみであり、本プロジェクトだけで、同州の地熱発電量は現在の10倍に増加する見込みだ。

XGSエナジーのジョシュ・プルーハーCEOは、「メタのAI開発という野心的な目標を支援できることを嬉しく思う。我々の技術によって、ニューメキシコ州の市場にクリーンで水に依存しない電力を、かつてない規模で供給することが可能になる」と述べた。

メタのエネルギー部門グローバルヘッドであるウルヴィ・パレク氏は、「AIの進歩にはインフラを支えるエネルギーが不可欠だ。XGSのような次世代地熱技術が実用段階に入ったことで、地熱発電はAI開発を支える主要なエネルギー源になりうる」と期待を寄せている。

ニューメキシコ州もこの動きを歓迎している。州内の地熱発電ポテンシャルは160GW以上に達するとの最新報告書も発表されており、ルハン・グリシャム州知事は「このプロジェクトは、高賃金の雇用を創出し、信頼性の高いベースロード電源で電力網を強化し、当州を次世代再生可能エネルギーのリーダーとして位置づけるものだ」とコメントした。

プロジェクトは2段階で進められ、2030年までの完全稼働を目指す。発電された電力は、地元の電力会社PNMの送電網を通じて供給される。世界最大級のクリーンエネルギー購入企業であるメタにとって、今回の提携はAI時代のエネルギー戦略を象徴する新たな一歩となる。

(原文)XGS Energy and Meta to Partner on 150 MW Advanced Geothermal Project

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