6月28日、世界的なプロフェッショナル・サービス企業であるEYは、 「EY’s 2023 Global DNA of the CFO survey」 を発表した。本調査で、CFOが長期的に優先すべき投資先としてESGが首位に立った一方で、逆説的ではあるが、企業が短期的な業績向上を目指す中で、目先の予算削減を経験する可能性が最も高い分野であることも明らかになった。
本調査「EY’s 2023 Global DNA of the CFO survey」では、EYがFT-Longitudeに委託し、21カ国、13業種、売上高10億ドル(約1,417億円)以上の企業のCFOおよびシニア・ファイナンス・リーダー1,000人を対象に調査を実施した。
今後3年間の長期的な投資優先事項トップ3を尋ねたところ、回答者の43%が「ESG」をトップに挙げ、次いで「テクノロジーとデジタル・イノベーション」、「サプライチェーンの回復力」の順となった。また、「持続可能性」は、今後3年間における組織の財務機能の変革の優先事項トップ3として報告され、上位2位には「テクノロジーの変革」と「高度なデータ分析」が入った。
しかし、報告書では、財務リーダーの50%が、長期的な優先課題として認識されている分野の資金を削減することで、短期的な収益目標を達成していると回答していることも明らかになった。ESGを筆頭に、37%がESGへの支出を短期的に削減または一時停止することを計画しており、テクノロジーとデジタル・イノベーション、人材と企業文化がそれぞれ34%で続いた。
長期的な価値を創造する必要がある一方で、優先的な投資分野を削減する圧力に直面することは、本レポートで明らかにされたCFOが直面するパラドックスのひとつであり、財務リーダーが報告した重要な緊張領域でもある。回答者の3分の2は、短期的優先事項と長期的優先事項のバランスをめぐって、リーダーシップ・チーム内で意見の相違があると答えている。
この緊張はESGの分野で最も顕著であり、回答者の32%が指摘した第一の課題は、「短期的な財務パフォーマンスとサステナビリティ優先事項への長期的な投資のバランスをどうとるかについて、リーダーシップチーム内で意見が大きく分かれている」ことであった。
EYによると、短期と長期の優先事項のアンバランスの影響は、最近の別の調査結果である「EY 2022年グローバル企業報告・機関投資家調査」の結果と一致しており、投資家の80%が「持続可能性への長期投資の根拠を適切に説明できない企業が多すぎる」と回答している。
EYの新しい調査では、調査回答者の中で財務リーダーの「より大胆なコホート」の結果が強調され、彼らは組織における財務機能の運用方法を大幅に進化させる取り組みを追求し、デジタル化や文化の変革、次世代の財務リーダーの育成を受け入れていると報告した。このコーホートでは、51%が長期的なESG投資を優先していると回答しており、他の回答者の42%と比較すると、半数近く(46%)がESGと持続可能性が長期的な経営への関心を高めていることに「強く同意する」と回答している。しかし、この同じグループは、気候変動やESGに対す る短期的な投資の削減や一時停止を報告する割合が44%と、より高 かった。
【参照ページ】
Global DNA of the CFO survey