英国裁判所、シェル取締役に対する気候変動訴訟復活の試みを却下

7月24日、英国高等裁判所は、エネルギー大手シェルの取締役会に対する気候変動に焦点を当てた訴訟の棄却を覆そうとした環境法団体ClientEarthの訴えを退けた。Trower判事による判決は、ClientEarthは「取締役がその義務に違反しているという疎明を行った」とは言えないとした。

ClientEarthは、この判決に失望しており、棄却を不服として控訴する予定であると述べた。

ClientEarthは2月に訴訟を開始。シェルのエネルギー転換戦略には欠陥があり、株主価値を危険にさらしていると主張し、取締役会に対し同社の気候変動計画を強化するよう命じるよう裁判所に求めた。同訴訟は、エネルギー転換に向けた準備について企業の取締役に個人的な責任を問うことを求める、この種のものとしては初めてのものであった。

本訴訟では、会社の成功を促進する取締役の義務には、気候変動リスクを軽減するために会社の目標を達成する可能性の高い戦略を採用するなど、気候変動に関連するいくつかの義務が含まれていると主張した。

しかし、この訴訟は5月に棄却された。Trower判事の決定は、明白な付随的義務は曖昧であり、取締役が考慮する要因に加える重みを決定することを要求する原則に反しているというシェルの主張に同意した。

7月初めの口頭審理で、ClientEarthは裁判官に対し、請求棄却の再考を求めたが、本決定でこの要求は却下された。

同判事はまた、5月の判決で、ClientEarthのシェルへの出資比率が27株と非常に小さいことから、「その真の関心は、シェル会員全体の利益のためにシェルの成功をいかに促進するのが最善であるかという点にあるのではないことが、極めて明白に推論される」と指摘した。

また、ClientEarthの主張では、取締役会が気候変動リスクを事業にとっての重大なリスクとして受け入れたことで、取締役会に具体的な義務が生じたとされているが、同判事は「取締役会が、その構成員全体の利益のために会社の成功を促進する最善の方法を(誠実に行動して)決定するのは取締役自身であるという、確立された原則と矛盾していると考える」と述べた。

【参照ページ】
(原文)Blow for activists as UK court dismisses Shell climate case
(日本語訳)英国裁判所、シェル取締役に対する気候変動訴訟復活の試みを却下

関連記事

“ホワイトペーパーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-7-23

    シェルパ、東洋経済新報社とシステム連携契約を締結

    7月23日、シェルパ・アンド・カンパニー株式会社が開発・提供する企業向けESG情報開示支援クラウド…
  2. 2024-7-17

    GRI、新たにCSRD/ESRS開示のためのサポートサービスをリリース

    7月10日、GRI(Global Reporting Initiative)は、新しいGRI-ES…
  3. 2024-7-17

    JCI、1.5℃目標に整合する2035年目標を政府に求める。216団体が賛同

    7月8日、気候変動イニシアティブ(JCI)は、「1.5度目標と整合する野心的な2035年目標を日本…
ページ上部へ戻る