6月5日、バイデン政権は、エネルギー集約型産業で使用される低炭素水素の生産、使用、流通を大幅に拡大し、米国の脱炭素化目標をサポートすることを目的とした「米国クリーン水素戦略およびロードマップ」を発表した。
水素は、クリーンなエネルギーへの転換のための重要な構成要素のひとつであり、特に、風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる解決が困難なセクターの排出量削減に役立つ。
現在、米国では約1,000万トン、世界では約9,400万トンの水素が生産されているが、その大部分は化石燃料を使って抽出されており、汚染物質やGHGの排出を生み出している。例えば、米国の水素製造は、主に天然ガスから水蒸気メタン改質により抽出しており、現在、年間約1億トンの温室効果ガスが排出されている。
水素を抽出するプロセスの電源として再生可能エネルギーを使用するグリーン水素のようなクリーンな水素能力の開発には、インフラ、電解、輸送、貯蔵などの分野で大規模な投資が必要となる。
新しい枠組みによると、大規模な水素製造の開発は、「持続可能で公平なクリーンエネルギーの未来を実現するソリューションの包括的なポートフォリオの重要な一部」を形成し、2050年までにネット・ゼロ・エミッション経済を達成するという約束と、2030年に経済全体の排出量を50-52%削減するという中間目標を含む米国の気候目標をサポートする。
バイデン政権は、クリーンな水素を気候戦略の重要な要素と位置づけ、超党派インフラストラクチャー法から95億ドル(約1.3兆円)を水素開発に割り当て、運輸・産業分野を対象としたクリーン水素ハブの開発に80億ドル(1.1兆円)、クリーン水素電解の研究開発に10億ドル(約1,400億円)、水素製造・リサイクルに5億ドル(約7億円)を拠出している。また、インフレ抑制法には、製造税控除を含む水素へのインセンティブが盛り込まれている。
本戦略では、クリーンな水素の生産と利用を2030年までに1,000万トンまで拡大することを目標としており、新しい資本プロジェクトとインフラの構築を通じて、米国で10万人の純増雇用を創出する。2050年には、クリーンな水素の生産量を5,000万トンまで拡大し、米国の排出量を10%削減することを目標としている。
目標を達成するため、ロードマップは、クリーン水素の戦略的でインパクトのある用途をターゲットとし、化学、鉄鋼、精錬、大型輸送、長期エネルギー貯蔵などの市場で最も価値の高い用途での利用を確保するなどの3つの主要戦略に焦点を当てている。
1つ目は、クリーン水素のコストを削減すること。2030年までにクリーン水素の生産量を1kgあたり1ドル(現在の約5ドル/kg)にすることを目標とする。2つ目は、材料やサプライチェーンの脆弱性に対処する努力を行うこと。3つ目は、地域ネットワークに焦点を当てること。優先度の高い水素ユーザーの近くで生産できるように、地域のクリーン水素ハブを拡張するための投資、生産、流通、貯蔵における規模の拡大を推進する。
【参照ページ】
(原文)Biden-Harris Administration Releases First-Ever National Clean Hydrogen Strategy and Roadmap to Build a Clean Energy Future, Accelerate American Manufacturing Boom
(日本語参考訳)米国、クリーン水素戦略を開始